焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「そんな様子なものですから、もう今はダアトにおいて頼るべきは導師ではなく詠師達だとダアトの住民の暗黙の了解になっているとのことです。実際導師に書類整理の仕事が回って来る時、詠師達が目を通してから導師に書類をこれを回していいと初めてゴーサインを出すそうですからね」
「だろうなぁそれ!ありありとその姿が想像出来るってばよ!」
更に公に出ない内政の場面においてものイオンに対する処置に、ナルトはより深く椅子を揺り動かしながら笑い飛ばす。



・・・導師になるよう生まれてからルークが消えるまでいかようにイオンがダアトで治世を行っていたかはナルトは知らないが、それでもある程度自身の意志で発言や行動を取っていただろう事は想像している。

そうでなければまずダアトを抜け出し自身の意志のみで和平に踏み切ろうなどと考えない。惑星屑が反対する上で監禁紛いな方法で拘束されていたからやむなくなどと言った面もあったことを加味しても、‘イオン個人の意志’を‘教団のトップの導師の総意の意志’にすり替えたような行動はルーク達のおかげで成功したからよかったようなものの、本来なら褒められた物ではない。少なくともナルトの世界ではそうだ。

元来仲介を取るか、どちらかに肩入れをするか、もしくは中立を貫くか・・・そんな選択をする際に重要なのはトップかそれに準ずる人間の判断のみではない、むしろ周りの人間がどのような判断があるかを吟味してから意志を決める事だ。国の判断で多数の人間が決めた上での事で失敗したなら判断を下した人間達で責任が発生して罪の比重は団体として割り振られるが、個人の意志でとなると一転して話が違って来る。個人が失敗したならまず何故独断的な判断を下したと言われ本来ならいたはずの味方を失い、その失敗の比重も団体と違い一人で一手に引き受ける事になるのだ。団体より一層強い、個人で決めた事に対する負の感情を。

・・・そして責任は個人に向けられるだろうが、それで被害が個人に留まるならまだそれはいいだろう。だがダアトは一個の国で、当然被害は国にも拡散される。そんな状況を大分立場の弱くなったダアトで見過ごす訳にはいかないと考えたのだろう、詠師達は。

元々強く言われて願われれば断れないイオンのこと、自身がヘマをしたこともあり詠師達の言うことを聞いたのだろう。だがそうしたことが、自身から実質的な飾りに引き上げてしまい発言力を失わせてしまったのだ。それで失われる物が出て来ると知らず・・・



「それでまぁちょっと気になったので個人的にライナーに聞いてみたのですが、あの役立たず導師守護役・・・もう導師直属の導師守護役から外されているとのことですよ」
「あっ、やっぱり?」
「えぇ、元々導師守護役は二・三十人くらいはいましたし彼女達も一人だけしか常に導師に付かないのでは導師守護役としてダアトに置く意味もありませんからね。それにあれを常に導師に付かせるようにしたのは元大詠師の独断ですからね。今では導師に付いてないのは当然で、付いていても他の導師守護役が付いていて導師に近付けない位置にいるようですよ」
「アハハッ!それは自業自得もあるけど、元の形に戻っただけだから文句を言う言われもないじゃん!けどあの役立たずの事だから、かなり堪えてそぉ~!」
「だと思いますよ。常に導師に付く導師守護役は他の待機してる導師守護役と比べ、多少は給与が高くなりますからね。ダアトに返す借金返済の期間も相応に長くなるでしょうから、まず不満は漏らしているでしょう」
そこからサフィールはコウモリ娘の話題に流れから行き、ナルトはそれを聞き嬉しそうに身を震わせサフィールはまた茶を口にする。



・・・そう、イオンが失った物は本来守るに値しないコウモリ娘だった。







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