焔と渦巻く忍法帖 epilogue

「え・・・眼鏡狸?それマジで?」
「はい、マジです」
ルーク達と会う前のサフィールだったなら絶対口にしないだろうそれにナルトは事実に驚き、サフィールは軽く茶を口に含む。
「とは言っても彼女は兄と違い至ってまともな感覚を持った普通の人でしてね、そのところは私が保障しますよ」
「はぁ・・・でも、そんな人と一緒に資金提供してもらってんだから兄の事についてちょっと気まずくならない?」
「あぁ、そのことについてなら問題ありませんよ。彼女も兄の起こした事について、大分頭を抱えていましたからね」
茶から口を離し眼鏡狸の妹の事について話すサフィール。ナルトの質問にまた問題のないよう答えるが、またナルトは眉を寄せる。
「妹ってんなら普通兄の味方するんじゃないのかってば?」
「・・・ここにいるようになってから、時折手紙が来るようになったんですよ。マルクト皇帝陛下から」
その質問にサフィールは椅子から立ち上がり、部屋の隅に置いていた棚にまで行き棚を開けると手紙を取りナルトに手渡す。
「まぁ一応彼女も市長という身分で、グランコクマにどのように街の資金を使っているのかを報告する義務がありますからね。その中で私が音素を使わない譜業の開発をしているとの報告も彼女はしていたものですから、陛下は興味をそそられたようで時折手紙を私に寄越すようになったんです。で・・・そんな中に私に宛てられた手紙に書かれていたのが、兄の現在のことです」
「ふんふん・・・ふーん、成程ね~・・・」
手紙を受け取るようになった経緯を聞きながらナルトは手紙を見ると、納得しながら手紙を机に置く。
「こんな中身の手紙が送られて来るって事は、そっち方面以外期待してないんじゃねーのかな?あの皇帝陛下」
「そうとしか言えないと思いますよ。何せ」



「現職の軍人で大佐の位置にいる人間を譜業の研究に駆り出してるなんて言ってるんですから」



ナルトの見た手紙の内容、それは要約すればサフィールの言った通りだ。
・・・軍人というのは、基本的な役割は国の人間を守る事にある。大きな意味で言えば荒事用の人員でもあるが、そんな中で地位の高い大佐の位置にいる人間を研究職につけることは事実上の左遷に近い物があると言える。もちろん軍人でも書類作成などの庶務を担当することはあるが、研究職と繋がる物とは到底言える物ではない。
「彼も礼儀作法以外ではそれなりに能力的には優れてはいますからね。人前にさえ出さなければどうとでも使えると思ったからこその処遇と言えます」
「そしてそうやって本職と関係ない所に飛ばされるって事は、出世と縁が無くなるって事にも繋がるんだよな~。平たく言えば左遷だってばよ、この処遇」
ナルトはそんな眼鏡狸の現状に適材適所と左遷の言葉を結び付ける。
・・・そんなふうに本職の軍人とは関係ない所に行かされたのだ。軍人は手柄や能力などを見られて昇進を果たす傾向が多い・・・ピオニーがもう眼鏡狸を信頼しないだろうことがあるからだが、本職で役に立てない眼鏡狸に昇進の芽が出る事はないだろう。研究職とは余程の大発見を個人でしない限り、一つのグループとしてその発見は取り纏められる傾向が強い・・・そのことも踏まえれば、国が眼鏡狸個人が重大な発見をしたとしても研究者‘達’と一絡げしてもみ消す事も不可能ではない。
「まぁそれで一応私と陛下が個人的に手紙のやり取りをしていることを市長も知っていますのでね、聞かれた訳です。兄の事はどうなのかと・・・それでまぁ嘘をつくのもなんなのでオブラートに包みこそはしましたが、話したんですよ。陛下の不興を買った事と今研究職みたいなことをしていると」
「それで頭を抱えたんだ、その人?」
「はい、そうです。元々市長は兄が人と違う事を知ってはいたんですが、そこまで人とズレた事をしたのかと歎きましてね。それであまり子供の時はそこまで仲がいいと言える物ではなかったんですが、それからはどこかあまり距離を感じなくなりました。今では兄より確実に良い関係を築いていますよ」
「ふーん、それならよかったじゃん」
ナルトはサフィールのその後を聞き、また頭の後ろで手を組み笑みを見せる。







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