焔と渦巻く忍法帖 epilogue

・・・オールドラントに一般に知られるレプリカルーク、民衆の前でローレライとともに譜石帯に昇った時から三年程の月日が経った・・・









・・・絶え間無く降り注ぐ銀色の雪が幻想的に街を彩る・・・この街はケテルブルク。三年経ったこの街には神託の盾を抜けた、サフィールが住んでいた。



「ふぅ・・・」
トレードマークと言える浮遊椅子に乗らず徒歩で寒冷地方特有の作りのしっかりとした家に一息ついて入るサフィール。その容貌は三年経ったのに歳をあまり取ったように見えず、髪は肩より下まで伸びている。
「この椅子もそろそろただの椅子になるんですね・・・」
と、サフィールは玄関近くに置いてあった浮遊椅子に近付き、少し名残惜しそうに椅子の背の部分を撫でる。



・・・サフィールはこの浮遊椅子が音素を燃料に動いていた事を誰よりも知っている。そしてそろそろ久しく動かしていないこの椅子が、普通に使っていた頃のように動かしても動かなくなることも・・・ただ、何故サフィールは普段から使っていたこの椅子を今使っていないのかと言えば・・・



「明日が、『ルーク様』の成人になる日なんですよね・・・」
サフィールはしみじみ椅子を眺めながら呟く。
・・・そう、遂に暦の上で煙デコの誕生日が明日に迫っているのだ。そしてルークが残した世界を存続させる二つの策を国が選ぶ日でもある。だが既にサフィールはどちらを選ぶかわかっている・・・故に椅子が使えなくなっても困らないよう、普段から歩くことにしたのだ。



「あっ、その椅子もう使ってないんだ」
「!?・・・貴方は・・・」
すると唐突に背後から声が聞こえ、サフィールは慌てて振り向く。だが驚いていたサフィールはその声の元を見て、ホッと表情を緩める。
「・・・久しぶりですね、ナルト。元気にしてましたか?」
「あぁ、元気だったってばよ」
・・・そう、サフィールの前に現れたのはナルトだった。三年経ち背も伸び服装もオレンジが殆どの派手目服装から、少し黒も交えた少し抑え目の物へと変わっている。前につけていたゴーグルも額当てになっている。
するとサフィールはナルトの後ろを覗き見るよう、視線を送る。
「・・・ルーク達は一緒ではないんですか?」
「ああ、シンクは来てないってばよ。こっちがどうなるかって元々興味無かったようだし。アリエッタは付いては来てるけど里帰りだからってクイーンの所に行ってるってばよ。ルークは流石にこっちに来たら時間足りなくなるから、よろしく言っといてくれって」
「そういうことですか・・・」
探していた人物達の行方を聞き、サフィールは納得する。
「・・・まぁ立ち話もなんですから入ってください、一人暮らしですがお茶くらいはありますから」
「ん、そうさせてもらうってば」
そこでサフィールはゆっくり話そうと家の中に誘い、ナルトは遠慮せずにその後をついていく。






「美味くはないかもしれませんが、どうぞ」
「ん、どうも」
一人暮らしにしてはやけに広い家の中、作りのいいテーブルを挟み二人は椅子に座りサフィールが入れた茶を互いに口に入れる。
「ふぅ。そっちの調子はどうだった?ここが故郷ってサフィール言ってたけど、三年間どんな風に暮らしてたんだ?」
まずは自分からとナルトは口からカップを離すと、サフィールの三年間の事を聞く。
「私はルークが消えてからしばらくは人々に色々話を聞かれていましたね。まぁそれも一過性の物でしたので落ち着いてからはもっぱら音素を使わない譜業の開発に従事していましたよ。それでこの街の市長が私の知り合いでその兄と違って先を見る目があるので、先行投資という形で資金と研究場所を提供してもらっています。おかげで大分音素を使わない譜業を開発出来ていますよ」
「ふーん、やることはやっていたって訳か。でもその市長ってのは随分早く音素を使わない世界の事を考えてんだな。兄と違ってっていうけど、そんな兄の方って穀潰しなのか?」
経過を聞きナルトは椅子に深く背もたれ頭の後ろで手を組む。
「あ、いえ。その兄というのは貴方達の言う」



「眼鏡狸ですよ」








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