焔と渦巻く忍法帖 第二十四話

「さてと、火影様のとこに報告に行くか。ナルトんとこに行くのはそれからだな」
鍵を肩に担ぎつつもルークは報告を口にし、その場から一瞬で姿を消す。



・・・さて、何故ルークが鍵を持って木の葉の里に戻ってきたのか?・・・それは音譜帯にまで昇ってしまえば地核にいたときのよう、ルークに交信することもままならないためだ。

サフィールが言うにはプラネットストームの通り道には音譜帯も入っており、地核程ではないにしても同調フォンスロットを開いても音素を遮りやすい状況に陥りやすいとのことであるらしい。そんな状況で無事に鍵を地上に送れるとも限らない為に、ルークは鍵を持って来たのだ。木の葉の里に。

ローレライからもそのようなことならと鍵を持って行く事を許してはくれた、別に鍵はプラネットストームを止めてから返してくれればいいと。

・・・だからルークは鍵を自らの手に納めつつも意趣返しをするためにあのような大掛かりな演技を行ったのだ、それら全てをまとめられるようなやり方でローレライを送る事で・・・








「・・・という訳で、三年後のその時までは別段気にせず俺を使って下さい。勿論、そのあとはもう向こうに関わる気はないんでそれが済んだなら俺はこっちに戻りますんで」
「・・・成程、分かった。三年経ったらお前には休暇を取れるよう手続きはしておいてやる」
「ありがとうございます」
火影の執務室の中、側近のシズネも外されたその場でルークは今までの経緯を机に座り両肘をついて手を組んでいる綱手に報告を終え、頭を下げる。
「ああそれと、ナルトと一緒に来たシンクとアリエッタとも顔合わせは済ませている。自来也にも話は通してあるから二人の教育には協力するよう命じてある。お前達が任務をする時は遠慮なく自来也に後を任せておけ」
「あ、はい。それは遠慮なく」
「・・・しかしまぁ、話を聞けば聞く程に向こうの世界の成り立ち方というのには呆れ返るな。それも宗教一つが世界を掌握していた弊害、というものなのか・・・」
シンクとアリエッタの事を口に出し、綱手は自分とは関係ないのに頭を抱えたような声を出す。
・・・宗教一つで世界を統一、それはこの世界では有り得ない事だ。木の葉の里がある火の国でも寺一つ取っても宗教の宗派が違うこともあるし、他の里に行けばそれこそ初めて聞くような宗派も諸々に存在する。そして宗派が違えば、思想もまた違って来る。人を殺す時は全殺しなんて狂った思想を持つ宗派もあるくらいだ、例えその宗派でなくとも思想が違えば説得という行動も難しい物がある。だがルークはそれを成し遂げ、世界の流れを一気に変えてきた・・・ここまであっさりとと思える位に。
「確かに心を操りやすかったのは否定出来ませんね。こっちはこっちで色々な考えを持つ奴がいるからそんなことは中々出来はしないだろうけど、宗派一つで治められる世界よりは全然バランスはいいと思いますよ」
「確かに、それは言えるな・・・」
綱手の声に反応したルークは自身の考えを述べ、綱手も同意する。
・・・宗派一つ、ということは個人の差はあれ一つの思想の元に世界は治められていると言える。だがそれは裏を返せばその思想を揺るがす事態があればつられて、世界も揺るがされる事態となる。その点多種多様な宗教のあるこちらでは宗教一つが混乱しても世界が揺るがす事態にはなりえず、あくまでもその宗教周辺の問題となりえる。
一つが崩れ落ちれば終わるが崩れなければ終わらない、一つが崩れ落ちても世界は一部が崩れるだけで姿を保ち終わらない・・・どちらがバランスが取れている世界かというのは、二人からすれば断然後者の方だった。



「・・・まぁいい。ルーク、お前はこれよりナルトの所に行くのだろう。だがその前に少し付き合え。久しぶりにお前が戻ってきたんだ、敬語はいらんから適当につまみでも作って私と飲め」
そこで綱手は自身の思考を打ち切り、成人に満たないルークに楽しそうに酒の相手を求める。
「ん・・・あぁ、いいよ。けどちょっと待ってくれね?久し振りに帰ってきたから食材もないし、色々買いに行きたいんだけど」
「あぁそれなら酒は私が用意してやる、とっておきのをな」
「お♪それはありがたいね♪んじゃすぐに買いに行くからちょっと待っていてくれよ」
「ああ、行ってこい」
そんな誘いにルークも至って楽しそうに砕けたノリで返し、その場から姿を一瞬で姿を消す。
「・・・三年後か。まぁいいだろう。話を聞く分にルークなら問題はないだろう、それにそれ程難しい案件じゃあなさそうだしな」
綱手は一人、その部屋で満足そうに笑む。ルークが戻ってきた事を喜び・・・









全ては回る、死神により



そして全ては三年後に訪れる



望まれて、望まれない変革が






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