焔と渦巻く忍法帖 第五話

「どうして村の外に出ようとしてるんだってば?」
修頭胸の事はさておき、今は何をイオンはしようとしているのかが重要である。その確認の意味でナルトはイオンに問いかけた。
「・・・盗難事件が気になって調べていたんです。チーグルは魔物の中でもおとなしくて賢い。人間の食糧を盗むのはおかしいんです」
「だからそれを調べに村の外に?」
「はい、チーグルはローレライ教団の聖獣です。チーグルがどうしてそんなことをしたのかどうしても気になって・・・」
沈痛な面持ちでうなだれるイオン。確かに教団の聖獣を想う心掛けはとても良いものだが、ルークとナルトはまたもうひとつ疑問があった。
「どうして一人で行くんだ?」
導師という教団トップの地位に当たるイオンになら護衛位常についている筈である。その護衛の姿がなく、イオンは一人でチーグルの所へ向かおうとしている。この事から、ルーク達はお人好しのこの導師が次に答えるであろう答えを予測していた。
「それは・・・迷惑をかけたくなかったんです。これは僕が個人的に調べたかった事なので、アニス達を巻き込む訳には・・・」
予想通りの答え。この導師は自らの立場を理解していない。自らの行動にどのような意味があるのかを。それと同時に護衛であろうアニスと呼ばれた人物にも失望を禁じえなかった。
(導師の立場の自分の行動に責任が常につくというのをこいつは知ってんのか?トップの取るべき行動は皆の模範になるような行動じゃねーと周りの示しがつかねーんだぞ。『迷惑をかけたくないから』?『個人的な理由』で離れられる護衛は『迷惑』じゃねーのか?トップが個人的な理由なんて持ち出すな。教団という国を動かすなら公私混同せずに、凛とした態度で大事に挑め。小事は部下にでもまかせればいい。それに護衛は護衛の役割を果たせず、挙げ句の果てに村の外に出てイオンが重傷でも負おうものなら護衛の任務怠慢として見られんだぞ。そうすれば間違いなくその護衛には罰が下る。自分は絶対に大丈夫なんて根拠のない自信で離れられる護衛はいい迷惑だろ。まあそれを言えばアニスとやらも易々と導師を簡単に見失っていいのか?自分の主だろ?何かあったら護衛である自分が真っ先に職務怠慢だって処罰されるって気持ち無いのか?・・・やっぱダアトには教育方針が間違った奴らしかいねーのか)
ダアト関係者に会うたびにひとつずつダアトの評価が下がっていく。自らを利用しようとしている老け髭謡将、秘密主義な自己完結女、任務怠慢護衛、そして人として幼すぎる導師。何だろうダアトって。
(人としてある意味特殊な人種が集まる場所なのかな、ダアト)
粋狂な教団だな、ルークの簡潔な感想である。





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