焔と渦巻く忍法帖 第二十四話

‘‘‘‘音譜帯!?’’’’
・・・そう、音譜帯。ここならばローレライ以外に行きようもない場所だ。だが民衆達に発表したよう、額面通りにルークはする気は一切ない。あくまでも民衆達にそうするんだと見せるための演出の一貫だ。
「そうです。ローレライ自身の話によれば、彼は創世歴時代にユリアとの契約が終われば音譜帯に昇り譜石帯の第七の層になる予定だったとのことで、この障気の問題に関して解決したならすぐにでも音譜帯に昇りたいと言っているのです・・・そしてその二つの問題を二つとも解決する為の手立てとして上げたのが鍵を持って、音譜帯に昇る事なんです」
‘‘‘‘・・・っ・・・?’’’’
音譜帯に昇る話から鍵をローレライが持っていくという話に変わると、イマイチ理解が出来ないと民衆達は首をひねる。
「まず音譜帯に上がる事、これはローレライの本懐にあたるのでいいでしょう。次に鍵を持っていく意味ですが、単刀直入に聞きますが音譜帯に昇る事が出来る人はいると思いますか?」
‘‘‘‘!’’’’
・・・ルークのわかりやすい効果を理解させる言葉に、一斉に民衆達の顔がハッとする。
「そうです。音譜帯という場所・・・これ程に鍵の保管場所に最適な場所はありません。誰も音譜帯に昇れるはずもないんですからね、ローレライ以外。更に言うなら鍵は第七音素から作られていますので、同様に鍵を作ったユリアを除けばローレライが一番持つのが妥当な所でしょう。ローレライは平和を願いこそすれ、争いは望んではおりません。そのように争いの火種を地上に置くよりは我が持っていた方がいいだろうと、ローレライは言ってくれました」
‘‘‘‘・・・’’’’
最高と言える安全な場所と管理人。鍵の行方を語るルークの声に、知らず知らず民衆達は頷きを入れている。
「無論、そうやってローレライが持っているだけではプラネットストームを停止させるという結論に至ったならそうすることは叶いません。故にローレライは音譜帯より地上を覗き見つつ、プラネットストームを停止させると決断を下したなら鍵を地上に送ると言ってくれました」
‘‘‘‘おぉ・・・’’’’
そして万事ぬかりないよう鍵の送り時を見計らうという話し口に、民衆達は納得の声を上げる。



・・・民衆達は知らない、国は既に三年後の煙デコの成人の儀をきっかけにどうするか決める事を決定項にしていることを。今自分達がルークの話から、プラネットストームを止める事が正しい事であると誘導されていることを。

そして最後のルークの行動までもを見た上で、世界へとプラネットストーム停止の方が正しいと世界に振り撒く役目を知らず知らず自分から背負ってしまっていることを・・・



「・・・ただ、そうするなら先程も言いましたがローレライが音譜帯に行く事が重要になります。ならいつローレライが音譜帯に行くかと言えば、それは今からです」
‘‘‘‘今?’’’’
納得を得てルークは声を落とし、今からローレライが音譜帯に昇ると言う。
「必要なことを話し終えればこれ以上いる気はないとローレライ自身言っていましたが、それ以上に鍵とともに地上にいれば鍵と一緒にローレライを利用しようとする人が現れてもなんら不思議ではありません。故に今からローレライは、音譜帯に昇ります。いらぬ争いを自らの存在の為に引き起こさないため・・・」
‘‘‘‘・・・っ!’’’’
その訳が人を思った訳だけに、民衆達はルークの頭上に浮かぶローレライを非常に名残惜しそうな視線で見つめている。複雑なのだろう、折角目の前に誰もが求めた伝説の存在が消える事が。



・・・ただ、惜しまれる存在はローレライだけではない。自らもそういう存在にするべく、ルークは行動を起こす。







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