焔と渦巻く忍法帖 第二十四話

「その訳なのですが、この・・・ローレライの鍵にあります」
持っていた譜石をしまい、代わりにルークはローレライの鍵を持ち上げる。
「話によれば創世歴に一度プラネットストームは故障して機能不全に陥ったのだそうですが、その機能不全をこの鍵を用いて譜陣を描きプラネットストームを補修して元の形に戻したとのことです。そこからプラネットストームは異常を起こすこともなく今日に至った訳ですが、そのプラネットストームを停止させるにはその譜陣を書いたこのローレライの鍵でなければ出来ないのです」
‘‘‘‘・・・’’’’
ローレライの鍵でなければ、そう意味深な話を聞き民衆達の視線がまた一層鍵に集中する。
「・・・なのですが、問題はこの鍵なんです」
‘‘‘‘?’’’’
が、途端に鍵を見て顔を複雑そうに歪めるルークに今度は疑問符つきで視線が集中する。
「その問題点なのですが、言ってしまえばこれは使い方が解るものが使えばプラネットストームをもう一度再建することも可能です。ここでもし世界が音素を必要としない世界になったあとローレライの鍵を誰かが使い、プラネットストームを再建してその鍵がもう見つからない所に持ち出されたなら・・・もう、プラネットストームを止める手段はありません」
‘‘‘‘!!’’’’
もしもの可能性の中で一番最悪な可能性の、打つ手なし。民衆に怯えを植え付けながら、ルークは更にその最悪な場合の絶望を深めていく。
「この鍵というのはユリアが作った特殊な物でユリアしか作ることが出来ず、代わりを作ることはもう出来ません。そのような唯一無二の物をどのように保管するのか、それが問題になりますがどこに保管するにせよプラネットストーム復活を目指す者の恰好の餌食となります。そのような時、もし管理を任せられた国が失態を犯して鍵を奪われたなら・・・一部の者達の暴挙により、世界は障気の復活をいつ来るか恐々としながら暮らさなければならなくなります」
‘‘‘‘っ・・・!!’’’’
鍵の代用品など作れず、プラネットストーム復活を望む者が悲願を達成したなら・・・
最悪に最悪を重ねるルークの想定に、民衆達はその想像に体を震わせだす。
「管理を任せられた国を疑いたくはありません、いつ奪われるかを恐々と恐れつづける訳にも参りません。故にどちらか二つの対策いずれかを取るにしても、このローレライの鍵の存在というのは非常に重要なのです。また、私はプラネットストームを止めた方がいいと思ってはいますが、それでも世界でどちらにするかの協議を重ねてその結果を反映させた上ででなければ停止をしてはいけないとも思っています。その考えを元にしてみれば、勝手にプラネットストームを先に止めようとする人が出かねない可能性もあります。痺れを切らした人が独断でやったなら・・・そういった人がいるかもと考えると、ローレライの鍵は更に預ける所が重要になります。下手をすれば音素が無くなった後なんの準備も対策も取れないまま最悪な状況に陥らされる、なんていうことも十分に有り得るだけに・・・」
‘‘‘‘・・・っ・・・!’’’’
ここでルークは自分の考え側だけを擁護するのではなく、むしろ疑いを持たせるように話して民衆達に息を呑ませて猜疑心を更に深めさせる。



・・・ただ何故ここでプラネットストーム停止から自らに寄ってきた心を自ら離れさせたのか?・・・それはその鍵の処遇を自らの望む所に置かせておくためだ。
そして、その望む所とは・・・
「・・・そんな事態に私はしたくありません。そしてそう思っているのは、ローレライも同様です。だからローレライは私にこう言って来ました」



「時が来るまでは我が鍵を持って音譜帯に昇り、時が来たならしばしの時だけは鍵を地上に送る、と」









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