焔と渦巻く忍法帖 第二十四話

「障気により世界が終わるとありましたが、現時点では我々が障気の中和に成功したために今しばらくなら障気は復活する事はありません。ただしあくまでも、今しばらくなら、です」
‘どういう事なんですか、今しばらくって!?’
今しばらくを強調して話すルークに民衆の一人が悲鳴のよう、叫んで問い掛けてくる。
「それは少し時間を取りますが、説明致しましょう・・・」
そんな声にルークは話をしていく、タルタロスの耐久性の問題とプラネットストームのひずみにより産まれる障気との関連性を・・・









「・・・という訳ですので、プラネットストームの音素の活動次第では障気中和に用いているタルタロスがいつ壊れてもおかしくはありません。下手をすれば預言に詠まれたよう、数十年もするころには障気により世界が滅びてもおかしくはありません・・・」
‘タルタロスが・・・そんな・・・’
‘障気に怯えながら、生活をしないといけないの・・・私達・・・?’
説明もしながらも最後に預言の通りに成りかねないと付け加えた言葉に、民衆達からちらほらと恐怖におののく声が聞こえて来る。
「皆様もお分かりでしょう、この障気という物がどれだけ危険で我々に近しい問題かを・・・ですが、この障気に対して取れる対策が二つあるんです」
‘‘‘‘えっ・・・!?’’’’
「っ・・・!?」
そんな中でルークは望みを与えるように二つの事を口にして民衆達をざわつかせ顔を見合わせるが、ルークから視線が外れた瞬間を利用してトリトハイムが焦ったようにルークの後ろにそっと近づく。
「・・・朱炎殿、もしやあのことを言うのですか?・・・あの二つの選択肢は両陛下と我々の間だけの話では・・・」
「心配はいりません、トリトハイム詠師。あくまでもあの二つを表向きに協議するきっかけを作る為に、選択肢をこの場で発表するだけです。民もこの問題について考えていただけるのですから、不利な事ばかりではありません。ここは私に任せてください」
「・・・わかりました、そういうことなら・・・」
不安さを隠しもしない声にルークはいたって自信を持った声で周りに聞こえないように返し、トリトハイムを渋々下がらせる。
(別に三国で‘秘密に’協議したほうがいいなんて一言も言ってねぇんだ。反論される言われはねーぞ)
そんな気配を感じつつ、ルークは心で毒づく。
確かにルークは秘密になどとは言っていない、そしていきなり対策は考えていたから大丈夫だなどと言ってそれを押し付けて受け入れられるとも思っていない。故に民自身にもその選択肢について考えてもらった方がこれからの世界の動きについていけるだろうし、何より世界滅亡という危機感をより現実的に抱いてもらえる。そう考えたからルークは選択肢を明かすことにしたのだ。
「その二つの対策に対してですが、また少し時間をかけて説明いたします。ご静聴お願いします」
‘‘‘‘っ!・・・’’’’
そこから民衆達へと再びルークは説明をすると言い、一瞬で民衆達の視線を引き戻して緊迫した沈黙の空間を作り出す。
「では、お話します・・・」
そしてルークはゆっくりと、丁寧に語っていく。後の世に全てを委ねた放任の策か、困難の代わりに安寧を手に入れる前進の策かを。









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