焔と渦巻く忍法帖 第二十四話
「皆様もお聞きしたでしょう、第七譜石の中身を」
‘‘‘‘・・・’’’’
空気を引き戻そうとすぐに譜石に詠まれた預言の中身を口に出され、瞬時に民衆達は強張った表情になる。
「キムラスカ・マルクト間の二国で戦争が起き、キムラスカが勝利を収める・・・戦争が起こる以上、どちらかが勝者になるのは結果として十分有り得る事だとは皆様もお分かりになると思います。ですが、その結果の更に先・・・オールドラントの死滅がハッキリと詠まれていた事・・・これが望まれる事態でない事も、お分かりでしょう」
‘‘‘‘・・・’’’’
その問い掛けに声は返っては来ないが、どこか諦めたように視線を下に向ける者が多数見受けられる・・・早速イオンが倒れた事から、預言への微かな信望をまだ抱いていた信者の心を不吉な物と認識させたことでへし折れたようだ。
「第七譜石に詠まれた預言にはマルクトから一人の男により病気が持ち込まれ、障気が復活・・・とありましたが、もし戦争に勝つとだけあった預言までは実行しようとマルクトの皇帝陛下を戦争の果てに討ち取ったとしてもそこに済む民までも全て討ち取るようなことは到底許される行いではありません。そのようなことをすればマルクトの人々は兵士か民かなど関係なくキムラスカに抵抗する道を選び、更にはキムラスカの心ある人々の反感を招く事になります。それにマルクト人全てを殺すなど到底出来ませんし、もしそれを成したとしても世界の食料の供給の大部分を担っているのはマルクトです。そんなことをしたならマルクトの広々とした肥沃な地にある作物の数々を育てる事も搾取することもままならず、数年もすればすぐに食料不足を招く事になります。キムラスカの領地から人を割いて作物を作ろうにも、大人数は送れません。既に仕事についている人を無理矢理にでもマルクトに送ればその仕事が滞る原因にもなる上、慣れない作業にいきなり取り掛かって今までと同じような成果など望めるはずもありません・・・つまりは都合のいいものだけを見ようとしたならすぐさま足元を救われ、世界的な危機を招く事になるんです」
‘‘‘‘!’’’’
そして更にそれでも戦争の結末までで預言を止めれば万事解決するのではと考えるやもしれぬ者達への牽制も含め、マルクトを滅ぼすメリットなどどこにもないとルークは告げて民衆達を一気に引き攣らせる。
・・・事実、制圧した土地の民の反乱などを危惧し土地の人々を皆殺しにした例はある。が、全て一人残らず根絶やしに出来た例はあまり見受けられない。余程計画的に手筈を整え他の場所に逃げ出す前に全滅させるならいいが、大国相手にそんなことがまかり通るはずがない。逃げる場所はそれこそいくらでもあるし、それなりの人数を揃えて事に挑まねば失敗するだろうしそんな大部隊が動けば襲撃を予知することなどたやすい。それらを踏まえればまず現実味がないのだ、何十万単位の人々を残さず殺すことなど・・・
「そのようなこと・・・皆様も望みたいなどとは思わないでしょう」
‘‘‘‘っ・・・’’’’
そこからルークは情に訴えるように思い詰めた顔と声で投げかけ、民衆達の顔を一気に暗く思わせた物へと変える。
・・・ここまではまた、ルークの思い描く流れの通り。そしてルークは仕上げへと繋がる最後の段階を踏むための一手を投じる。
「・・・ただ、更に言うなら問題はそれだけではありません。その問題とは障気により世界が壊滅する、という部分にあります」
‘‘‘‘っ!!’’’’
民衆達の驚愕が障気という単語で引き出される。
そう、まだ民衆達に植え付ける種はあるのだ。障気という不安の種は。
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空気を引き戻そうとすぐに譜石に詠まれた預言の中身を口に出され、瞬時に民衆達は強張った表情になる。
「キムラスカ・マルクト間の二国で戦争が起き、キムラスカが勝利を収める・・・戦争が起こる以上、どちらかが勝者になるのは結果として十分有り得る事だとは皆様もお分かりになると思います。ですが、その結果の更に先・・・オールドラントの死滅がハッキリと詠まれていた事・・・これが望まれる事態でない事も、お分かりでしょう」
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その問い掛けに声は返っては来ないが、どこか諦めたように視線を下に向ける者が多数見受けられる・・・早速イオンが倒れた事から、預言への微かな信望をまだ抱いていた信者の心を不吉な物と認識させたことでへし折れたようだ。
「第七譜石に詠まれた預言にはマルクトから一人の男により病気が持ち込まれ、障気が復活・・・とありましたが、もし戦争に勝つとだけあった預言までは実行しようとマルクトの皇帝陛下を戦争の果てに討ち取ったとしてもそこに済む民までも全て討ち取るようなことは到底許される行いではありません。そのようなことをすればマルクトの人々は兵士か民かなど関係なくキムラスカに抵抗する道を選び、更にはキムラスカの心ある人々の反感を招く事になります。それにマルクト人全てを殺すなど到底出来ませんし、もしそれを成したとしても世界の食料の供給の大部分を担っているのはマルクトです。そんなことをしたならマルクトの広々とした肥沃な地にある作物の数々を育てる事も搾取することもままならず、数年もすればすぐに食料不足を招く事になります。キムラスカの領地から人を割いて作物を作ろうにも、大人数は送れません。既に仕事についている人を無理矢理にでもマルクトに送ればその仕事が滞る原因にもなる上、慣れない作業にいきなり取り掛かって今までと同じような成果など望めるはずもありません・・・つまりは都合のいいものだけを見ようとしたならすぐさま足元を救われ、世界的な危機を招く事になるんです」
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そして更にそれでも戦争の結末までで預言を止めれば万事解決するのではと考えるやもしれぬ者達への牽制も含め、マルクトを滅ぼすメリットなどどこにもないとルークは告げて民衆達を一気に引き攣らせる。
・・・事実、制圧した土地の民の反乱などを危惧し土地の人々を皆殺しにした例はある。が、全て一人残らず根絶やしに出来た例はあまり見受けられない。余程計画的に手筈を整え他の場所に逃げ出す前に全滅させるならいいが、大国相手にそんなことがまかり通るはずがない。逃げる場所はそれこそいくらでもあるし、それなりの人数を揃えて事に挑まねば失敗するだろうしそんな大部隊が動けば襲撃を予知することなどたやすい。それらを踏まえればまず現実味がないのだ、何十万単位の人々を残さず殺すことなど・・・
「そのようなこと・・・皆様も望みたいなどとは思わないでしょう」
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そこからルークは情に訴えるように思い詰めた顔と声で投げかけ、民衆達の顔を一気に暗く思わせた物へと変える。
・・・ここまではまた、ルークの思い描く流れの通り。そしてルークは仕上げへと繋がる最後の段階を踏むための一手を投じる。
「・・・ただ、更に言うなら問題はそれだけではありません。その問題とは障気により世界が壊滅する、という部分にあります」
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民衆達の驚愕が障気という単語で引き出される。
そう、まだ民衆達に植え付ける種はあるのだ。障気という不安の種は。
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