焔と渦巻く忍法帖 第二十四話

‘‘‘‘ローレライ!?’’’’
ローレライ。やはりその名に過敏に反応するのはこの世界の人間の特徴だ。
「そう・・・ローレライです。彼の存在は同調フォンスロットという音素振動数が全く同じでなければ起こし得ない通信手段を用い、私の意識に直接話し掛けてきました。その内容とは地核から我を解放してほしい、というものでした」
‘地核!?地核にローレライがいたのか!?’
その過敏に反応する習性を利用し、ルークは巧みに地核にローレライがいたことを明かして民衆達の興味を引く。
・・・ただ障気中和の際にローレライと接触したとは言わない。そう言ってしまえば、予定の流れが狂うから。
「始めはそう聞いて、正直私も半信半疑といった所でした。ですがそう思っていた時にこの・・・ローレライの鍵が私の手元に送られてきました」
‘ローレライの鍵!?’
‘あれが・・・!?’
そこでルークは鍵を片手で抱え上げ、民衆達にその存在を強く認識させる。
「私はこの鍵を媒体に地核に向けて超振動を使えばローレライを解放出来ると言われ、恐る恐る超振動を使いました・・・そしてその結果、私はローレライを地核から解放して彼の存在と共にこの場にいます」
‘ローレライがこの場に・・・!?けどそれらしい存在はどこにも・・・!’
「出て来てくれ、ローレライ」
更に壮大な決断の上にローレライを解放したと言い、民衆の嘘だと疑う声をハッキリ掻き消す声でルークはローレライを呼ぶ。
『承知した』
‘‘‘‘!?’’’’
その呼び掛けにローレライも返事を返すと同時に鍵ごと発光しながらルークの頭上にその身を移動させ、民衆達の度肝を一斉に抜かせる。目を丸く、身を引いてない者など一人とて民衆達の中にはいない。
そしてそこからルークは一気に押し込むよう、鍵を下ろしつつ静かに強い語気の言葉を放つ。
「皆様方、これで私の言葉が嘘ではなかった事はお分かりになるでしょう・・・ですが私はローレライを解放した事実、そのことをひけらかすためにこの場に来た訳ではありません。そしてローレライが私に自身を解放してほしいと言って来た理由もけして明るい物ではない事が、地核から自身で出ることが出来なかった事からお分かりになると思います・・・だからこそ皆さんに聞いていただきたいのです、ローレライから明らかになった真実を・・・」
‘‘‘‘・・・っ・・・’’’’
更に切実な想いまでもが込められた話し口・・・民衆達は明らかにルークからの圧に呑まれ、声を失う。



・・・神と崇められる伝説の存在が降臨というシチュエーションに、宗教の教団員が沸き立たないはずがない。だからルークは潰したのだ、預言の象徴とも言えるローレライを盲目的に担ぎ上げる勝鬨を疑問で眼を覚まさせる事で。



と、ここでルークは手元から譜石を取り出す。
「・・・皆様は聞いていらっしゃるでしょうか?ケセドニアにて語った、キムラスカとマルクト間での戦争が預言に詠まれている事を・・・」
‘‘‘‘・・・’’’’
その問い掛けに言葉にして表す者はいなかったが、各自首を縦に振って話を聞いている事を肯定する。だが何故人々が言葉にしないのかと言えば、一挙手一投足を聞いて見逃そうと民衆達はしていないからだ。ルークの声と、視線の先にある譜石を。
「・・・ローレライを解放した後、私は彼といくつか話をしました。そんな中で私はその預言の更に先の事について、聞きました・・・そこで彼が私に話ながら渡してくれた物がこの」



「第七譜石です」










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