焔と渦巻く忍法帖 第五話

「あれ、導師イオンじゃねぇ?」
あの後宿に戻り、修頭胸を起こした二人。準備を終え、いざ出発!!っという時、村の外に一人で行こうとしているイオンをルーク達は発見した。
「導師イオンが何故一人で・・・」
「じゃあ何してるか聞くってばよ!!」
案ずるより聞くが易し、ナルトは修頭胸が本来先に行かなければいけない筈の導師の元へ先駆けていった。
(村の外は魔物だらけなんだぞ、いちいち考えてねぇで主の所に行けよ。もしイオンが魔物に襲われて死んだらどうするんだよ)
自らの視界に入っているなら魔物から守れると鷹をくくっているのか、あまりあせった様子も見せずに小走りでイオンに近付く修頭胸。
(もしナルトがイオンを狙う刺客だったらどうすんだよ)
修頭胸からすれば昨日知ったばかりの素性も知れない子供、会ってろくに時間も経っていない人物を信じられるというのだろうか。
それに昨日導師イオンを見た瞬間、ルークは良く言えば『優しい』、悪く言えば『甘いお人好し』という印象を受けた。どちらかと言えば悪い印象の方が強い。



ナルトでなくとも人の良い笑みを浮かべて近付けばこの導師はあっさりと自分の懐へと入れるだろう。それこそ裏を見ようとせずに表面だけで判断して・・・
(上も下もダアトってのは甘いな、それともダアトの軍服や法衣を着てれば自分は大丈夫だってか?預言があるから教団に歯向かう様な存在はいない、だから別段警戒する必要もないって気持ちでいんのかな)
警戒心が足りなすぎる、そんなことを思いながらルークもゆっくりと導師イオンに近付いて行った。
「どうしたんだってばよ、こんな所で」
「え・・・?」
ナルトの声に反応するイオン。いきなり背後からかかってきた声に少しイオンは戸惑っていた。
「ちょっと、導師イオンに失礼よ!!すみません、導師イオン」
自らの主に対しては失礼か失礼でないかは分かるようだ、ルークとナルトは下らないと思いながらもそう考えていた。
「あなたがたは確か昨日ここにいらした・・・」
「ルークだ」
「ナルトだってばよ」
「神託の盾騎士団モース大詠師旗下情報部所属第一小隊所属ティア・グランツ響長であります」
順順に名前を名乗っていくルーク達。しかし、修頭胸の名字を聞いた瞬間「はっ!?」っという表情で驚いてしまった。
「ああ、あなたがヴァンの妹ですか。噂は聞いています。お会いするのは初めてですね」
「・・・なあ、お前本当にふ・・・師匠の妹なのか?」
「?・・・ええそうよ」
ルークが途中で言いよどんでいた「ふ」という言葉に少し疑問を持ちながらも、肯定を返す修頭胸。ちなみに「ふ」の続きは老け髭と言いかけて訂正しただけだ。
(妹にバレたのか、老け髭。詰めが甘いな。まあしかし、人んちに襲撃するような考えを持たせるって、どれだけ血縁者を追い詰めさせる様な計画考えてんだよ。つーか人んち襲撃して自分の事だからあなたには関係ないなんて堂々と言えるって老け髭はどれだけ狭い考えに妹を育てたんだよ)
別段興味を持ってこの女の顔を見ていた訳ではない、だから老け髭と似ているとかそういうのは全くルークの頭の中になかった。実際素性を知った今でも「へー、そうなんだ」程度の認識にしかなっていない。
(兄妹二人揃ってどうでもいい位馬鹿だな)
改めて認識したのは馬鹿さだけ、実りがねぇなとルークは心で呟いた。




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