焔と渦巻く忍法帖 第二十四話

・・・足元が安定しない、浮遊したような違和感はこれから先味わうことはもうないだろう。ラジエイトゲートを出て真っすぐダアトに向かいながら、既に外殻大地も降下し終えた地を走りつつルークはそう感じていた。

そして一度を除けばもう二度とここに来ることもないとも思い、零れる笑みを浮かべていた・・・












・・・そして数日後、ルークは外殻大地降下の影響でやたらと教会の前に説明を求めた人達が込み合うダアトへとたどり着いた。
「おー来てる来てる。この人の多さなら十分に世界に情報も伝わるだろうし、早速イオンにトリトハイムのオッサンのとこに行ってローレライ解放の舞台の開幕を手伝ってもらうか」
その様子をルークは適当な建物の屋根の上から見ながら、建物の上を跳ぶように走りつつ教会へと向かう。



そして教会の中のイオンの私室。ルークはノックもそこそこに私室に入ると、そこには少し肩を落として疲れの様子を見せるイオンにトリトハイムがいた。そして少し離れた所には、明らかにルークを見て怯えた視線になっている二人より顔色の悪いコウモリ娘がいる・・・
「お久しぶりです、お二方。外殻大地降下を終え、今戻ってまいりました」
「おぉ、朱炎殿。お待ちしておりました・・・既に教会の前は見られているでしょうが、人々は今、外殻大地降下に関しての説明を求めこのダアトに集まっております。導師と我々で代わり代わりに人々に説明をしてはいますが、如何せん人数が多く少し手間取っております・・・今は我々は休憩しているのですが、他の詠師達は教会の前で神託の盾と一緒に人々を抑えてはいます・・・」
「成程、出来るだけ早く事態を沈静したいのですね?」
「はい、朱炎殿の申していたローレライの解放・・・それをうまくいかせれば人々も納得していただけるでしょうし、預言に対して執着する人々への諦めにも繋がります。故に早くローレライの解放をしていただければありがたいのですが・・・」
だがそれはあえて気にせず入室してルークが頭を軽く下げると、トリトハイムは早速と言わんばかりに問題提示を始めてくる。
多弁なのは必死な証拠で、こちらを伺う視線を送るのは期待を見せる証拠・・・恐らくトリトハイムは隣で疲れているイオンよりはこういった面倒事の解決に関しては、ルークの方に信用を置いているだろう。でなければここまでいっそ開き直って導師を差し置き、状況打開を求めた発言など出来ようがない。
「はい、構いません。ただやるなら今からです」
「今・・・ですか?」
「はい、今です」
ただ自らもそうしようと考えている為にルークは特に反論もせず、今から始めようと言う。だがイオンは今という言葉に、疑問の顔になる。
「一刻も早く事態を沈静したいのでしょう。それにケセドニアの時のように人々を集めて事前にローレライを送ります、などとでも言って不測の事態を作りたくはありません。ローレライが実際にいるとでも言い、時間を空けて人々がまた集まるのを待てばその存在を奪還しようとしかねない者が現れかねません。謡将を奪いに来たラルゴのように」
「っ!・・・それは・・・」
「言ってしまえば、不利な体勢を自ら作る事になるんです。宣伝を設けて時間を空けることは。だから今教会の前にいる人達の前で場の流れに合わせ、ローレライを解放するほうが事態の沈静ともしもの危機を回避出来るんです」
「だから今、だと・・・」
そんなイオンにルークは考えられる危険性を説き聞かせる。だがそこまで聞いて即決しないイオンに、ルークはイオンの泣き所をつく。
「はい。それにローレライ自身も音譜帯に昇りたいと願っています。そう考えれば、そんなに時間をかけられないのも事実です」
「っ・・・それも、そうですね・・・」
それは心情を攻めた話。ローレライの事を出され、イオンは息を呑み、同意の声を出す。
「・・・わかりました。今から僕が教会の前にいる皆さんに重大なお話があると言います。そこで朱炎は僕の話が終わったなら、ローレライとともに話をしてください」
「はい、わかりました」
そしてようやく決意を固めたようにイオンは段取りを決める。
「では行きましょう」
ルークからの頷きにイオンは出発を口にし、全員が「はい」と同意をすると先頭を歩くイオンの後に付いていく・・・







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