焔と渦巻く忍法帖 第二十四話

「それでは我々はこれで失礼します。キムラスカとダアトに話を通しましたらまた外殻大地降下について便りを出しますので」
「ああ、わかった・・・ジェイド、役目は終わったからお前は残れ。話を通すのにお前は別に必要ないだろう。こっちで働け」
「・・・はい」
うやうやしく頭を下げるルークに応対しながらも、ピオニーはそこから眼鏡狸に視線を向けて呼び止めモロに「逃がさないから雑用をしろ」と含みと強制の圧迫を込めた声を出す。立ち止まり振り返った眼鏡狸は皇帝の不興を最大限に買っている為に、反論も余計な口出しもなくただ一言で重く暗く頷くばかり。
そのやり取りを後ろで繰り広げられている事を確かに感じつつ、ルーク達は薄ら笑いを浮かべながら宮殿を退出していった・・・












・・・それから数日間でルーク達はバチカルとダアトに行き、ピオニー達の前でした話を多少内容を変えつつ行った。結果として言うなら概ね成功と言える物だった。やはりローレライと第七譜石の存在は非常に大きな物で、その存在を明らかにした時ほとんどルーク達のペースに引き込める状態を容易に作り出すことが出来た。

ただキムラスカではマルクトと違い譜業産業が畜産産業よりも活発というのもあったため、ルーク達はこう付け足した。「形態を変えた譜業を開発出来ねばキムラスカのせいで障気が復活したと言われかねないことも有り得る上、音素を多大に消費する譜業が新たに作られ始めたなら障気の復活を早める原因ともなりえます。だがそれを恐れ新たな譜業を作るのに一々制限を設けては産業の発展は望めないし、技術者達の反発を招くやもしれません。そうなればキムラスカから優秀な技術者達がマルクトに亡命することを考えるきっかけに・・・」、と。

国として亡命者を出すことは対外的な視線から見て、この国はうまくいっていないと暗に示す事になる。そう言った極端な行動を取るまでと、不満という弱みを見られる事になるのだから。ましてや技術者などは譜業産業を中心とするキムラスカにとって、酷い痛手に成りかねない。

・・・そこを突かれ、インゴベルトも酷くうろたえていた。ならばいっそマルクトと協力したほうがと、利己的な独り言が飛び出す程に・・・



・・・キムラスカとダアトでも十分な成果を上げたルーク達。ダアトに用事を済ませた修頭胸を残し、キムラスカとマルクトに要約すると外殻大地降下をするからその準備を済ませたならダアトに連絡をくれという手紙を出し、今度はルーク達はアルビオールを返す為に一路シェリダンへと向かった。









「それでは朱炎さん、どうもありがとうございました」
「こっちも世話になったし、別にいいよ。じゃあじいさん達にアルビオール助かったって伝えといてくれ、俺らは早くダアトに戻らなきゃいけないからさ」
「はい。それじゃあ失礼します」
シェリダンの港で別れの挨拶を繰り広げ、ノエルは頭を軽く下げると港の外へ向かう。本来アルビオールはあくまでも障気中和の為に使うものであり、三国に寄ったのはルーク達の頼みだから。故にノエルをシェリダンにまで送った訳だが、老人達は下手に情に熱い分にルーク達の用が済むまでついてやれと言い出しかねない。
そのような事態になっては面倒な為にルーク達は付き合ってもらって悪かった事と急いでダアトに戻らねばならないことを口にして、老人達と会わない状況で別れる事にしたのだ。



・・・これからこの世界から消えるというのに、その瞬間に立ち会われては困るから・・・










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