焔と渦巻く忍法帖 第二十四話

・・・ユリアシティには致命的な弱点が一つある。それは食料が街という名前がつくのに、住民の10分の1程度を一年食わせていけるだけの作物も作れないその地形だ。その地を障気に浸蝕させないためには創世歴の最新技術を地にしなければいけなかったのはわかるが、土がなく作物もなければ人の助けがなければすぐにこの地にはまず人は住めない。

この問題についてはダアトの一部の上層部とユリアシティ側が食料をやり取りすることで解決してきたが、外殻大地降下後にローレライを譜石帯に送り終えれば一気に事態は急変する。

・・・その時考えられる事態としてダアト側はユリアシティとの繋がりを表向きは否定はするが、裏では食料提供をしなければあることないこと暴露するなどと言われ協力を強要されることだろう。ただそうやって裏でダアトに圧力をかけはしても、その預言の監視者という役割もあって惑星屑との繋がりを疑われるだけに精々食料提供くらいにしかユリアシティ側は要求は出来ない。

いや、正確には惑星屑との繋がりをいっそ認めなければ世界の不審の目はより一層強まるばかりだ。ユリアシティから外殻大地に繋がる唯一の道のアラミス湧水洞はダアトのあるパダミヤ大陸にあり、到底その道に繋がる場所を誰も知らなかったで済ませられる問題ではない。ここは惑星屑との繋がりを認め、もう預言を詠まないとでも言った上で行動しなければまず民衆の嫌疑の感情を抑える事は出来ないだろう。

・・・それらを踏まえればダアトには財政難の上に食料提供と脅迫という責め苦をおい、ユリアシティは預言を自ら廃止するとそのアイデンティティを放棄しなければならず、事実上のローレライ教団の崩壊を招くこととなる。ダアトとユリアシティは表向きはともかく強い繋がりを確かに持っていたが、預言を実行する役のダアトは既にユリアシティを見捨てており指示役のユリアシティも下手な動き一つ取っただけで壊滅の危機を招く事になる。

・・・二つの組織によって成り立っていたローレライ教団、だがもうその成り立ちはルーク達に壊されてしまった。二度と修復出来ないと判断が容易に出来るほど・・・世界の流れを用いられて・・・









・・・だが、まだルークは終止符を打つ為の一手を投じていない。預言を諦めきれないだろう者達及び煙デコ達にまで投じる、最後の遅効性の猛毒を・・・



「ユリアシティに関しても確かに問題はありましょう。ですがもう一つ、差し当たって当面の問題ではありませんがいずれ必ず問題となることがあります」
「何・・・まだ問題があるというのか?」
そこから話題転換をしたルークに、ピオニーはまた眉を寄せる。
「はい。それは障気中和装置になって今地核にあるタルタロスです」
「タルタロスだと?」
タルタロスの名を聞きどういう事だと言いそうなピオニーに、ルークはまた前置きを置く。
「物でも人でもどんなに姿を保ったとしても、いずれは劣化を招く・・・それは外殻大地が限界を迎えている事から、陛下もお分かりでしょう」
「・・・まさか!」
「そうです」



「今すぐ壊れる、という訳ではないでしょうがいずれタルタロスも劣化して壊れる事になるでしょう。そのことについても今のうちに考えておかなくてはいけません」



「「「「!?」」」」
流石に今までの流れからピオニーもタルタロスの末路に前置きから気付き、ルークは気付いた結論をハッキリ言葉にする。だが臣下及びに修頭胸達はそれを聞き、愕然とした様子を見せる。



・・・時が経てば物は劣化する、それは摂理と言える。だからこそその摂理を利用して飲み込ませるのだ。預言信者達にとって猛毒以外になりえない、時が経って発芽する毒の花の種を・・・







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