焔と渦巻く忍法帖 第二十三話

『済まぬ、言葉を誤った。ユリアは我を解放出来なかったのではなく、我を音譜帯に送ってはプラネットストームの再構築すらも出来なかったから地核に我を押し込むこともやむを得なかったのだ』
「・・・どういうことだ?」
『簡単に言えば昔、プラネットストームは一度譜術戦争で不具合を起こしたのだ。その不具合によりプラネットストームから発せられた音素は世界を巡る事も出来ず、どうするべきかとの議論がなされた。その時ユリアが鍵を使って譜陣を持ってプラネットストームを再構築したわけだが、そのやり方でまた一つ問題が起こった。それは我がプラネットストームに閉じ込められてしまったことだ』
「お前が、プラネットストームに?」
『ああ、プラネットストームに我が鍵で譜陣を書いたのだが・・・その時に運が悪く、再構築して再び勢いを取り戻したプラネットストームから出て来た溢れ出る第七音素に飲み込まれたのだ』
「・・・第七音素に飲み込まれた?」
『ああ、新たにプラネットストームが再構築された時に正常に作動を始めた音素の流れはダムの決壊のように凄まじかった。今まで普通に世界を巡っていた音素がその不具合により、ずっとそこに溜まっていたのだ。その量は我もユリアも予測出来なかった・・・故に我もプラネットストームに津波にさらわれるように取り込まれたのだが、ユリアが咄嗟に鍵を地核に投げ大譜歌を用いて我を鍵に宿してくれなければその時我のその存在は消えている所だった』
「ふーん、一応第七音素で出来てるって言ってもちゃんと物質になってたからただの第七音素にならなくて済んだって事か。けどその事故の代償としてローレライは地核に行ってしまい、ユリアと別れてしまった、と」
『ああ、流石に地核にまで行けば我にはもうユリアの譜歌も届かなかった・・・故に我はこうやって二千年、そなたらと会うまでジッと耐えていたのだ』
「・・・」
そこまで聞き、ようやくルークは疑いの目を消す代わりに考えるように手をあごに沿える。
「・・・超振動じゃないとお前を解放出来ない理由は?」
『地核から我を解放するには我の鍵を用いての超振動以外に他ならない。だが擬似超振動は二人以上の第七音譜術士がいねばならない上に、力を我のいる地核に確実に向けられる保障がない。現に我もどこに飛ばすかまでは狙っては出来んのだ』
「・・・成程ね」
だからタタル渓谷だったのかと偶然に過ぎなかった場所に、ルークも擬似超振動では確実性がないのだと認識する。
『だが鍵を用いて地核にいる我を解放するイメージでそなたが単体で超振動を使えば、我もようやくここから脱出出来るのだ。地核を貫く程のエネルギーとそれを正確に操れるコントロール、この二つを兼ね備えているのはそなたとルークだけ・・・だから頼む朱炎・・・そなたの超振動で我を解放してほしい・・・』
一通り疑問に答えきった所で改めてと、ローレライはルークへと頭を下げているかのような声を上げる。実際は目の前にいるローレライが乗り移った修頭胸は浮いているだけで、一切頭など下げていないが。
ただ、それでも真剣だという事は聞いていて伝わって来る。アリエッタはその空気に感化されたのか、苦しそうにローレライが乗り移った修頭胸を見ている。
「・・・ああ、いいぜ。解放はしてやる」
『!それは、真か・・・!?』
そのローレライの求めにルークは応じると言い、そのローレライの声に喜色を浮かべさせる。
「だがまだ質問と頼みがある、それを聞いてからだ。何、そう難しい事じゃないからまず聞いてくれ」
『ん・・・わかった』
だが続いた言葉にローレライも勢いを削がれて、仕方ないというようにルークの声に応じる。








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