焔と渦巻く忍法帖 第二十三話

『わかった・・・ではその訳を言おう』
答えを待っていたルーク達に、ローレライは早速答えを切り出す。
『そなた達に交信をしていたのは、単刀直入に言えば我を地核から解放してもらいたいからだ』
「・・・解放?」
解放、真剣に頼み込むその口調にルークは眉を寄せる。
「今のお前は本体じゃないのか?話し方からして分身かなんかなのか?」
『・・・今の我はあくまでも地核の狭間から我の一部を飛ばしたモノだ、時間が経てばすぐにユリアの子孫から霧散して消える。だからこうやって会話をした後、出来るならすぐに我を解放してほしいのだ』
「いや、ちょっと待てローレライ。聞きたいことがあるんだけどまだ時間はあるか?」
『なんだ?まだ少しなら大丈夫だが・・・』
自らの話をどんどんと進めていくローレライ、そんな中でルークは話を止め自らの質問に持っていく。
「地核にいるって言ってるけど、なんでお前は地核から出られないんだ?話からして、俺かルーク様の力を借りなきゃまず出られないんだろ?そんなところになんでお前がいるのかも、気になる所なんだけどなぁ・・・?」
『・・・わかった、言おう。時間もないし、そなた達はその訳を知る権利もある』
当然と言えば当然と言えるルークの疑問。ローレライが何故地核にいたのか、その存在を知ったなら確実にその訳をこの星の皆は知りたがる事だろう。
だがルークはその意図を興味本位では聞いていない。ローレライも修頭胸越しに見据えられた射抜くような隙のない鋭い視線に、言わなければ時間が足りなくなるだろう事も合わせて観念して話し出す。
『我はプラネットストームが作り出された事によって生み出された存在だ、本来プラネットストームがなければ我も存在しなかった。そしてそのプラネットストームにいた時、我はユリアと出会った・・・そこで我はユリアと契約したのだが、ユリアは我を解放するには至らなかった・・・』
「・・・ふーん、ユリアでもローレライを地核から解放するには至らなかったってか。それなら納得だな。ただユリアでも出来なかった事を、俺らがやれるのか?」
一度は納得した様子を見せていたルークだったが、再度ルークはうたぐりの声を上げる。
『いや、そなたらでなければ出来ん。何故なら我を解放出来るのは超振動だからだ』
「超振動?・・・擬似超振動じゃ駄目なのか?」
超振動と聞きルークは擬似超振動での可能性を問う。するとルークの手元にいきなり第七音素の光が集まり出す。
「・・・これは・・・・・・剣、いや鍵・・・?」
『それは伝承に残っているとは思うが、ローレライの鍵だ』
その光に注目していると、途端に剣とも鍵ともつかぬ奇妙な形状の物へと姿を変えてルークの手元に納まる。それを確かめるように見ていると、ローレライから自らの名を関した鍵だと言われサフィールと眼鏡狸が驚きの反応を見せる。
「これが、ローレライの鍵・・・!?」
「知ってるのか、サフィール?」
「ええ、一説によればローレライそのものを鍵に宿してユリアが使っていたとのことですが・・・まさか、実際に存在するとは・・・」
するとそこでルークは途端に鋭い視線を再びローレライに送る。
「・・・って言ってるけど、真実はどうなんだ?ローレライそのものを宿してたんなら、地核から出れてたって事になんだけど・・・サフィールの言葉が正しいならな・・・」
暗に嘘をつくな、真実だけを話せとルークはローレライに脅しではない純粋な殺気をぶつける。



・・・そもそもがおかしい、ルークはそう感じていた。伝承に残る存在とは少なからず目撃例があってこそ、火のない所に煙など立たないのだ。現に鍵にユリアがローレライを宿していたという伝承が残っている。こう言った場合、大抵は大袈裟か偽物だったりもするがローレライという伝説の存在が実物にいたのだ。

それらを踏まえれば、伝承と現在に矛盾が存在するローレライ・・・それをはっきりさせるためにも、ルークは事実を確かめているのだ。何やら企んでいるのかどうかを、ハッキリとさせるために・・・いざという時はローレライを放任するなり、殺すと判断する為に。



だがローレライはその視線と殺気に揺るぐ事はなかった。








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