焔と渦巻く忍法帖 第二十三話

「ユリアの譜歌を・・・?」
「そうそう、その譜歌を歌ってくれ。まぁちょっと実験したいことがあるだけだ、別に誰かを攻撃対象にする必要もないから自由に歌ってくれればそれでいいよ」
「・・・わかったわ」
最初訝しんだ視線と声を向けていた修頭胸だったが、ルークから有無を言わせない笑みを浮かべた声と、害がなさそうなの話し方も併せ少しの間を空けすんなりと頷く。
「んじゃ譜陣も発動させるか」
すぅっと歌うように呼吸を深くする修頭胸を見て、ルークはさっと譜陣に近付く。そしてルークが譜陣に近付き手をかざすと、途端に譜陣がその模様にそって光りだす。
「譜陣はこれでよし、時間が経ちゃ障気の中和も無事になるんだよなサフィール?」
「えぇ、しばらくしたら障気も徐々に納まるでしょうね。恐らく数日中には外殻大地降下をしても問題がないくらいに障気も消えてなくなるかと思われます」
「そっかぁ・・・なら後は・・・」
サフィールとの会話から、ルークは修頭胸の方を見る。そこにはシンク達が少し距離を取り、譜歌を歌う修頭胸の姿。
「・・・おっ?」
するとルークは歌いはじめてそんなに時間も経っていないのに、ある変化を感じ取った。
「どうしました?」
「いや、第七音素が集束してる感じが・・・しかも相当量があいつの方に」
サフィールがルークのその様子を見て質問するが、返ってきた答えにまさかと思いながらサフィールは修頭胸に改めて注目する。
「・・・あっ!?」
『ユリアの子孫か、その体しばらく借り受けるぞ』
すると途端に第七音素が修頭胸の周りで目に見える程大きく光りだし、その光に修頭胸も気付いて悲鳴を上げるが一人を除き、誰も聞いた事のない声が辺りに響く。
「・・・半ばかもしれないって程度で、考えてたんだけどな」
そしてその光が修頭胸を包み込む中、ルークはもう確信しているのか呆れに近い様子でボソッと呟く。
『どうやら朱炎、そなたは我の存在に感づいていたようだな』
「・・・あぁ、声が聞こえた時にはもうお前だって思ったよ」
そんななかで光に包まれた修頭胸は事もあろうに発光しながら体を少し浮かせ、謎の声でルークに話しかけてきた。それも朱炎と暗部名を呼ぶ形で。



「ちゃんと会話をするのは初めまして、だな。ローレライ」



「ローレライ・・・!?」
確信していたその名をルークははっきりと口にする、ローレライと。その名に信じられないと目を見開くのは眼鏡狸。だがそんな驚きなど意に介さず、ルークは修頭胸に乗り移ったと思われるローレライへ話し続ける。
「まさかホントに譜歌歌ったら来るとは思ってなかったけどな」
『いや、譜歌のおかげもあるのだが我がここに来たのはそれだけではない。我がここに来たのは朱炎、そなたに会う為だ』
「俺?」
話の矛先が自分に来たことで、ルークは何故かと首を傾げる。
『我が時折そなたやルークに交信を試みていたのは、そなた自身がよく知っているだろう。それとそなたとユリアの子孫を屋敷から飛ばしたのが我だということもな』
「ああ、わかってるよ。それで俺が地核に来ることを知ったからここに来たんだろうけど、何の用があって俺やルーク様に色々ちょっかいかけて来たんだ?事と次第によっちゃ協力はしてもいいけど、くだんねぇ理由ならてめぇを消滅させるぞ?」
前置きをまずは置いてきたローレライに、先を促すようルークは訳を問いながら親切と暴力を引き合いに出す。特にいきなり修頭胸とのストレスまっしぐらな対面をさせられたため、消滅のくだりの時は乗り移った修頭胸ごと消滅させんばかりにルークはローレライに冷めた笑みと声を送っていた。
そのルークに対してどういった答えが返すのか、ナルト達はルークと一緒にその答えを待つ。







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