焔と渦巻く忍法帖 第二十三話

・・・港にタルタロスが停泊はしているが、近くに技術者達の姿がない。ルーク達はそれを見て、港からシェリダンの街へと移動する。






そしてシェリダンの街の中、寄り合い場となっている建物にルーク達は入る。
「スピノザさん達はいますか?」
「!あっ、あぁ・・・あんたたちか・・・」
確認の声をかけると老人の集団の中にいた、サングラスをかけた老人が驚いたようにこちらに近づき応対してきた。これが、スピノザだ。
「タルタロスの準備は出来ていますか?」
「あぁ、出来てはおるが・・・いくらお前さんの頼みとは言え、もう二度とこいつらと組むのはゴメンじゃ」
「なんじゃと!?それはこっちのセリフじゃ!」
「・・・」
早速用意が出来たか確認を取ると、いつの間にかめ組とい組の老人二人による口論へと場は変わる。口論は熾烈を増していく中、スピノザは極めてやりにくそうな表情になっていく。



・・・そもそも、スピノザは老け髭の手先だった。それも仲間である、い組の二人にすら内密の形で手先となっての。

それが老け髭から解放されたと同時に、ルーク達からい組とめ組を協力させるように老け髭の手先だったことを黙る代わりに動かざるを得なかったのだ。察するに仲間とライバルを騙しているようで、気分が悪いといった所だろう。一応スピノザは脅しをかけられ協力させられていたと聞いたので、そこのところはまだ罪悪感があるらしい。

それを考慮した上で別にもう関わる気もないのも併せ、ルーク達はこれが終わったらスピノザをもう解放する気でいる。無論、牙を向けるようであれば一切容赦する気はない。



「ほらほら、その辺にしなさいな」
「そうよ、そんなこと言い合う前にこの子達にタルタロスの使い方を教えなきゃいけないじゃないの」
「「む、むぅ・・・」」
口論がいつまで続くのか、そんな風に考えているとい組・め組の紅一点コンビに口論していた二人は勢いと言葉を途端に無くす。流石に何故いがみ合う二組が協力したのかを忘れる程ボケてはいなかったようだ。
「ごめんなさいねぇ、時間を取らせちゃって」
「いえいえ、早速説明していただいてよろしいですか?」
「えぇ、それでね・・・」






・・・い組、め組の話は要約するとこうだ。まず地核に突入するためには装置を稼動しながら移動せねばならず、その装置はアクゼリュスの跡地のある穴から地核に突入することを計算して、そこにギリギリで到達出来る五日間しか持たないように設計されていること。そして地核に突入した後わずかしかない時間で譜陣を発動させアルビオールで飛び立って地核からオサラバ、それで障気中和は完了・・・とのことだ。






(ま、ローレライがいたら接触する時間はあるってことか)
状況を把握し、ルークは冷静に物事を見つめる。
「・・・それで本来じゃったらアルビオールのパイロットは別にいるんじゃが、知っての通り一号機の墜落でそのパイロットは少し休ませなければいけなくてのぅ。代わりにこのノエルに行ってもらう」
「ノエルです、よろしくお願いします」
「あっ、よろしくお願いします」
状況把握に勤しみながらもめ組のイエモンという老人から紹介され、横から歩み出て丁寧に礼をしてきたノエルという女性にルークも頭を下げ返す。
「心配はせんでもいいぞ?一号機の事故により問題点は解決しておるし、ノエルの腕も確かじゃ」
そこでいらぬ老婆心というか、老爺心を発揮しイエモンはノエルを信頼するように言う。
「いえ、その点はしてはいません。それともう今からでも出発出来ますか?」
「あぁ、整備はバッチリじゃが今から行くのか?それならわしらも見送ろう、それくらいはせんとな。それでいいか、お主らも」
「・・・まぁそれくらいならいいだろう」
「ハハ・・・ありがとうございます、では行きましょう」
その心に軽く返しながらも今すぐの出発をルークは口にする。イエモンはい組の方に一緒に見送りに行くぞと言うが、その提案にヘンケンが極めて不本意そうに同意するのを見てルークは本心から苦笑いを浮かべ、出発しようと足を運んでいく。その後に各自、ついていく・・・








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