焔と渦巻く忍法帖 第二十三話

「そう考えれば、シンクは貴方達の生きる世界に身を投じる訳ですが・・・貴方から見て、シンクは忍の世界で生きられると思いますか?」
一通り修頭胸への話が終わった所で、サフィールは話題をシンクの忍者の資質について問う。
「まぁナルトと勉強してる様子見てると、普通の奴よりは要領は間違いなくいいな。そっから暗部クラスまで伸びるかどうかはシンク次第だよ」
「いけるとは断言しないんですね」
「上忍どころか、中忍にすらいけない忍者もざらにいるからな。それに実力がつく前に死ぬ、なんてことも全然有り得るし。それはこっちの世界でも当然のことだろ」
「言えてますね。このような質問をしてすみませんでした」
どこの世界にもある弱肉強食の縮図、それは忍の世界でも兵隊の世界でも変わりはない。シンクが暗部に入れなかったらそれが事実だというだけのことだと思い、サフィールは聞くまでもなかった事だとルークに謝りを入れる。
「別に気にしてねぇよ。ただ問題は・・・アリエッタなんだよなぁ」
「あぁ・・・彼女はまだテスト中なんですよね」
その返答にアリエッタの名を出すと、ルークはサフィールと一緒にナルト達がいるであろう方向の壁に視線を向ける。









・・・ダアトにいる時、ルークはアリエッタにナルトの世界に行く事を告げた。その時アリエッタにルーク達は寂しそうな顔をしたアリエッタに質問をした、アリエッタは向こうに行く気はあるのかと。その質問にアリエッタが少し考えて出した結論はこうだった。



「・・・アリエッタ、ルーク達と一緒にナルトの所に行きたい、です」
「いいのか、クイーンと話をしないでそんなことを決めて?」
ダアトの外れにある森の中、決心をした瞳で向かい合うアリエッタに、ルークはクイーンのことを引き合いに出す。
「・・・この前、ママに会ってきた、です」
するとアリエッタはクイーンと聞き、暗くうつむきながら話し出す。
「ルーク達に助けてもらったこと、ママはすごく喜んでた、です。けどその時にママ言いました。〈チーグルの森ではたまたまルーク達が助けてくれたからいいが、これ以降人の手が我々に迫って来ないとも限らない。現にあの場に我を殺そうとする者がいたと、ルーク達は言っていた・・・アリエッタ、我がいつまでも無事でいられるとは限らないのだ。我を忘れろとは言わん、だがこれよりは我を頼る事なく自立してほしい〉・・・ってアリエッタに・・・」
「成程、クイーンからそう言われたから自立の為に俺達について来たいって思ったんだってば?」
「はい・・・」
クイーンとのやり取りを思い出して寂しそうにしている顔を見てナルトは改めて確認を取り、アリエッタは質問に苦そうに頷く。
(まぁ妥当かな、クイーンの判断は)
その様子を見てルークはクイーンの考えに内心、賛同していた。
・・・眼鏡狸がクイーンが実は生きている事を知らないとは言え、これ以降も人の手がクイーンのいる森にかからないとは誰も保障出来ない。そのような状況になるかもしれないのに、アリエッタが親離れ出来ていないというのは致命的と言えた。クイーンもその様子を思い浮かべた為、厳しい言葉を投げかけた場面がルークにも想像出来た。アリエッタも親離れ出来ていないとは言えそこまで言われたのだ、一大決心してそう言い出したはずだ。
・・・だからこそルーク達はその決断が戻れない物だと伝えなければいけない。ルークは決定していることを口にする。
「いいのか?俺達は向こうに行けば一回だけを除いたら、もうこっちに戻る事はないぞ?」
「えっ・・・?」
「クイーンがあっちに行くっていうなら話は別だけど、それをクイーンが拒否したらアリエッタはもうクイーンに会える機会は一回だけになるぞ?術式も俺とナルトで封印するし、以降は会えなくなる・・・それでもいいっていうなら、俺達は止めはしないし歓迎はするぞ」
「・・・っ・・・」
もうこの世界に関わる気はない、そう言われアリエッタは盛大に戸惑いながらルークの話を聞く。
・・・アリエッタには酷な話だが世界を越えて生活をするには、世界の全てを断ち切らねば到底出来る物ではない。未練を残しては確実に支障が出る、その点ではルークにシンクはこの世界に一切の思い入れがないので今すぐにでも移住の心構えがある。
だがアリエッタはそれを乗り越えなければ到底ルーク達の方が認められる物ではない、故にその言葉は非常に厳しかった。






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