焔と渦巻く忍法帖 第二十二話

「ああ、大爆発というのは完全同位体の存在同士に起こり得るかもしれない現象のことですよ」
「具体的に言うと?」
「まぁ単刀直入に言ってしまえば被験者がレプリカを乗っ取って吸収する現象です」
「・・・はぁ?マジ、それ?」
「はい、マジです」
大爆発の説明にルークは珍しく目を丸めてから、訝しそうに目を細める。しかしサフィールはその珍しい驚きといった様子を気にせず、話をする。
「完全同位体でない被験者とレプリカであるなら大爆発は起きる可能性は全くありません。それに完全同位体でも条件がキチンと整えられていなくては大爆発も起こる可能性はほとんどありません。ルークがそちらに行くというなら別に大爆発の影響を受けないでしょうからね、気にしなくても構いませんよ大爆発の事は」
「ん?大爆発起きるかもしれないのに俺は気にしなくてもいいってどういうことだ?」
「大爆発という現象は被験者側が抜かれた身体情報を回収するためにレプリカの体を乗っ取る物です。そのことからなのですが、大爆発を発動させる条件が厳しい上にもし何かの偶然が重なりルークの体を乗っ取ろうとしたとしても、流石に次元を隔てる場所にいる貴方を乗っ取れる可能性は極めて低いと思われます」
「ふーん、そう聞きゃ確かに簡単に起きそうにはないけど、いいのか?死ぬかもしれない煙デコにその事実伝えなくて。あれ、もしもの話で大爆発で俺を乗っ取れなかったら死ぬんじゃねぇの?体乗っ取るなんてカマ蛇ですら制約付きでしか出来ねぇんだし、サフィールの言い方だと発動したら止めようがなさそうだし俺って受け入れ先がなかったらその魂っていうか煙デコの存在ってどんな状態になるんだ?」
大爆発で乗っ取られる可能性が低いと言われルークは別にたいしたことなさそうな顔になるが、その顔のまま煙デコの状態について淡々と問う。
「乗っ取るにあたっては体を音素乖離させ、レプリカを吸収してその身を被験者としての人格で体を再構築すると思われます。まぁほって置けば大爆発が起きた時は受け入れ先の貴方が見つからない事で、『ルーク様』は消滅してしまう可能性が高いでしょうね」
その問いに大爆発の具体的に起こるであろう状況を話すサフィール。だがその口調には一切煙デコに対しての情を感じられない。
「どうして煙デコにそのことを伝えないんだ?」
「私にとって『ルーク王』のことはどうでもいいからです」
そして何故という声にもサフィールは王と呼称を呼び直しつつ、関心を持たない声で即答する。
「王に対して私はそんなに思い入れを持っていませんし、事実を伝えればいらぬ厄介事を抱えそうですからね。王よりむしろその隣にいる王妃によって」
「「あぁ」」
そう言われてルークとナルトは二人ハモって納得の声を上げる。
猪思考姫・・・大爆発の事を聞いたなら確実にどのような手を使ってでもサフィールに阻止するための手立てを要求してくるであろう、それこそなりふり構わずインゴベルトにも頼み込んで煙デコの確実な延命の為に解決策が見つかるまで軟禁の形を取らせようとまでして。流石にインゴベルトも次代の王が死んでは話にならないので、猪思考姫の話を受け取る事だろう。
その光景が想像出来るだけに、二人はサフィールの判断を妥当と考えた。
「それにいらぬ心配をかける必要もありません、あくまでも起きるかもですからね。ただ大爆発の事を知ったからには貴方はそれを利用する気はないんですか?」
「ん?そーだなぁ・・・別にいっかな」
すると今度は逆にサフィールから質問をルークが受ける。だが自分の話を別段気にした様子もない返答にサフィールは眉を寄せる。
「何故ですか?」
「いつ起こるかも起こらないかもハッキリしないもんなんだろ、大爆発って。煙デコに大爆発の事言ってビクビクさせんのも楽しいかなって思ったけど、猪思考姫がサフィール借り出してまで大爆発回避に本腰入れたら迷惑だからな、サフィールが。だから別にいっかなって思ったんだよ、あいついじんなくて」
「・・・そうですか、ありがとうございます」
その返答を聞き、自分を気遣ってくれたことにサフィールは素直に感謝を示す。そしてその返答の裏に自分の存在がなければ平気でその手段を使っていただろうこともわかるだけに、サフィールは少しいたたまれなさも感じていた。









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