焔と渦巻く忍法帖 第二十二話

・・・人というモノは良くも悪くも、考えざるを得ない事態になる状況になって動く。

ダアト内でそのような騒動が起こったことで、ルーク達が話を広めるまでもなく世界にはダアトの疑惑と信頼の低下に繋がる噂が大いに広まっていった。おかげで今は預言ではなくダアトに裏切られたと言い出す者が出て来て、抗議をする者が出る始末である。

・・・ダアト、そして預言に真偽を問う目が向けられている。ダアトは本当に大詠師に荷担していないのか、本当に預言を詠まないのか・・・一人一人色々な思惑はあれど、それを確かめる為に人々はダアトに訪問しているのだ。これからの人生の標をどうするかを決めるため。



・・・そんな混乱の渦中にあるダアト。だがダアトも伊達に世界でその地位を築けて来た訳もない。いずれは持ち直してそれなりに安定した状態を取り戻せるだろう。預言狂信者達の影はまだ見え隠れしはするだろうが。

だがそれで丸く収まるはずもない。まだ波乱は残されているのだ、預言を詠む事にとどめを刺すだけの波乱は・・・









「やはりここにいたんですね、二人共」
すると下を覗き込んでいた二人の後ろからサフィールが浮遊椅子に乗って現れ、声をかけてくる。
「おー、サフィール。わざわざ上までどうした?」
「ヴァン達を殺し、ここまで世界が変わってしまった以上貴方達がやろうとしてることは残り少ないと思います。そこで聞きたいのですが、外殻大地降下が終わったなら向こうに完璧に移住するのですか?」
振り向いた先にいたサフィールから出て来た言葉は、眼鏡を押さえながらの事後確認。そこに寂しさは見えない。
「んー、だろうな。あいつらにも意趣返しと後々の仕込みは済んだも同然だからもう特に用もないし」
「そうですか」
「なんならサフィールも来るってば?流石に今からじゃ忍者になんのは無理だろうから、こっちの方で言うところの譜業弄り関係の職業なら綱手の婆ちゃん経由で裏から斡旋するけど」
「いえ・・・そのつもりはありません」
齢十二程度の子供では到底口に出せないナルトの申し出に、サフィールは遠慮がちに頭を横に振る。
「貴方方には大した思い入れのない地でしょうが、それでもここは私が生まれ育った世界です。私はケテルブルクにでも戻って今までの人生の贖罪でもしながら暮らそうと思います」
どこか懐古的な雰囲気を漂わせ、はっきり宣言するサフィール。
「そっか・・・ならなんも言わねー」
「サフィールがそう思うならそれでいいってばよ」
・・・二人はサフィールの過去を旅の途中で聞いていた。故人を想うのは到って間違いではないし、過ちを思い返し暮らす事も間違いとは言えない。
ルークとナルトはそのサフィールの決意も感じ取った為、引き止めるような事も言わずただ事実を受け入れた。
「ただまた一つ問題があるのですが・・・」
「ん?なんだよ」
「アリエッタに関しては貴方方はどうするつもりなのですか?」
しかし今度はどこか告げにくそうにサフィールは二人に質問する。が、その質問に二人は気にした様子でもなく即答する。
「別に?アリエッタが好きなようにすればいいってばよ、俺達が気にする事じゃないから」
「そーそー。まぁいきなり俺らがいなくなったら泣きそうじゃあるから、一応一言先に告げとく予定じゃあるけどな」
「・・・随分とアッサリしてますね。ただ気になったんですが、職を斡旋すると言った私と好きにするよう言ったアリエッタの差はなんですか?」
返ってきた答えにまたサフィールは疑問を口にするが、これまたルークは即答で返す。
「アリエッタにはクイーンがいるからな。その気になりゃクイーン達も向こうに連れてく事も出来るけど、クイーン達がそれを望むとも限らないし」
「もしアリエッタがこっちに来たいって言っても、両者の間で意見が分かれてクイーンと一緒じゃなきゃ嫌だって言ったら俺らは連れて行く気はないってば。流石に親離れ出来ない状態の子供を連れてく訳にはいかないしね。忍者にするかどうかとはまた別次元の話だってば」
「・・・そうですか」
二人からの答えを聞いたサフィールは妙に納得してしまう。
アリエッタはいい意味でも悪い意味でもまだ子供と言える。親との意見の対立で二の足を踏むようなら、いっそ連れていかない方が余程アリエッタの為にもなるだろう。
二人の意見は至極真っ当と言えた。








8/16ページ
スキ