焔と渦巻く忍法帖 第二十二話

・・・この話の例にはフェミ男スパッツを上げよう。元々ホド出身で一族を滅ぼしたファブレ公爵にフェミ男スパッツは復讐を果たそうとしたが、実際はファブレ公爵に恨みを持っていたのはフェミ男スパッツだけではないだろう。戦争とは大きな爪痕を残す、肉体的にも精神的にもだ。そしてそれは攻めた側でもあるキムラスカの人間にも言える事でマルクトに対してホド戦争で家族を殺されたなど、フェミ男スパッツと同様の恨みを持っている者も当然いるだろう。そして大きくはなくとも国境線で小競り合いの戦闘なども起きていたと、猪思考姫はアクゼリュスに行くとき兵士の慰問に行ったと言った。小さいとは言えよく争いは起きていたのだ、怨恨が発生するには事欠かない状況と言えるだろう。

・・・元々犬猿の中だった二国、だがその険悪さすら元を辿れば壮大に遥か昔から仕組まれた物であった・・・ケセドニアでルークがそう暴いてしまったのだ、預言に浸りきっていた者の心情はそれを聞いて酷く心を乱した事だろう。

ある者は戦争が詠まれていたことは置いておいて預言に詠むのを止めるのを否定してくれと泣き崩れ、ある者は預言に対し憤慨し神託の盾兵士に酷く攻撃的な姿勢を取っていた・・・前者は戦争の闇を知らない者の世間知らずな声で、後者は少なからず争いに関わって戦争による痛みと罪を知ったからこその態度と言える。そう言える理由とはその人物達が同時に場に鉢合わせ、声を荒げて口論する場面をルーク達は実際に目撃したからだ。

・・・闇を知る者はその闇に呑まれてイカれた者を除けば、恐れを得る事が出来る。争いの闇は酷く人を荒ませるが、一度恐怖から離れれば心に刻めるのだ。平和という物がどれだけの価値なのかを。だが平和をただ享受し、戦争を経験していない者には預言が詠まれることの方が重要だと考えている・・・その差は非常に大きかった。

・・・一時、その争いのせいでダアトは非常に騒然とした。その争いで泣き崩れていた者は更に泣き崩れ、憤慨していたものは更に憤慨して戦争の被害者であることを告げて泣き崩れた者を攻め立てた。その争いは近くにいた神託の盾が憤慨した者を取り押さえた事で事なきを得たが、その者の声はダアトの動揺を大きく誘った・・・



「別国の街を一つ包囲したとは思えない丁寧さだよな、見違えるぜ神託の盾」
「本来これが普通なんだけど、預言が無くなりゃこんなもんだってば。それに暴動なんて起こされちゃたまんないだろうしね」
・・・ルークとナルトは懇切丁寧につかみ掛かった者をなだめると、状況説明をしている神託の盾兵士を見てまたせせら笑う。



・・・憤慨した者を押さえたダアト。だがその憤慨した者の後に続けと言わんばかりに、今度は別の群衆達が騒ぎ出したのだ。‘預言を詠むのを止めたのに、何故預言を詠む事を良しとする者を守るのか’と。察するに声を発した人達は憤慨した者と同じような立場にいた者達、ルーク達はそう考えていた。

そして続いた声は、‘実はまだ大詠師のように、戦争を詠んでる預言を実行しようとしてるんじゃないのか!?’・・・という怒声だった。

・・・流石にその声に周りで騒ぎを傍観していた群衆達も不穏な響きを持った推測の言葉に、驚くしか出来ずに大いにどよめいた。まさか、と。
預言を詠むのを基本は望む預言信者達とは言え、戦争と考えられていたなら引かざるを得ないだろう。

・・・その声をそのまま放って置いたならダアトはまだ混乱の渦中にいただろう。だがトリトハイムが教会前の異変に気付いて駆け付け、必死にその人達をなだめて状況を説明して大詠師とは自分達とは関係ないと説明した事でようやく事態は収まった。



・・・だがそれ以降もまたその問題を口にするものがいる、今もまたルーク達の下にいるのがそれだ。









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