焔と渦巻く忍法帖 第二十二話

「フフッ、せわしなく動いてるってばね」
「そりゃ当然だろ。だって預言詠まないなんて、宣言しちまったんだからな」
・・・溢れ出て止まらない程教会に人が殺到する中、神託の盾兵士が必死にその人の流れを食い止めている。ルークとナルトはその光景を教会の建物の上から覗き込むように見ながら、せせら笑う。









・・・老け髭達三人を処刑して場を収めてから、数日が経った。ルーク達はその処刑を終えてから、修頭胸達を各国へと帰した。しばらくは特にお前らにはやることがないからと、送り出す形で。

そして当のルーク達が何故ダアトに来たのかと言えば、シンク達の退役届けを渡すためだ。

シンクとサフィールは元々神託の盾を辞めるつもりでいたが、アリエッタも一連の流れから神託の盾を辞める事を決めたとルーク達に辛そうな表情で話してきた。被験者イオンとの思い出が残る場を離れるのはきついのだろうが、寧ろルーク達はその決断を内心で喜んだ。何故なら神託の盾にそのまま三人を居させる気はなかったからだ。

体面としては途中で老け髭達の過ちに気付きルーク達に手を貸したというのが三人に対する一般世間の見方になるのだが、それでも老け髭達の味方だった事実には変わりはない。老け髭達に手を貸したのには変わりないのでその分の罪は消えないが、三人には悪行を行うのを思い直したという情状酌量の余地がある。

それらを考えた結果、今神託の盾を自主退職するという形を取れば、罪がイーブンになって消えたと大衆が見るだろうという事とダアトのゴタゴタに巻き込まれて三人の退職がそれほど大事に見られなくなるという一石二鳥の事も併せ、神託の盾を辞めた方がいいと三人に勧め、ルークとナルトはシンク達三人の退職を見届けに来たのだ。

その結果、暫定で教団のNo.2の位置についたトリトハイムからルークとナルトの見守る中で三人は退職を勝ち取った。何故イオンでないかと言えばそういった人事に関して、イオンは関与しない形を取らされていたからだ。人事に関して決定権を持っていたのはコウモリ娘をイオンにつけた事からわかるよう、惑星屑。惑星屑が人事権を牛耳っていた問題に関してはこの際置いておくが、そのお鉢がトリトハイムに回るのはある意味当然であったがためにトリトハイムの元に行ったのだ。

・・・そしてルーク達はその時トリトハイムに対して、このような話もしていた・・・






「トリトハイム詠師、よろしいですか?」
「どうされたのですか?」
「実はこのような物があるのですが・・・」
「・・・何々・・・これは?」
ルークはトリトハイムに近付くと、手元から紙を取り出し手渡す。
「お気づきですね?これはタトリン氏の借用書になります」
「はい・・・ですが、何故このような物を?」
「詠師にはお話をしておきますが、この借用書に書かれたこの金・・・これは教団の運営資金から払われ、タトリン夫妻に対して出されている借金です」
「なっ!?それはどういう事なのですか!?」
借用書に首を傾げていたトリトハイムはルークから運営資金を使われた物だと知り、激しく動揺して目を見開く。
「そのことについて、詳しくお話します。しっかり心に留めておいてくださいね?」
そんな様子を見てルークは冷笑を口元に浮かべ、説明を開始する。






「・・・という訳です」
「・・・大詠師はそのようなことまで・・・それにアニスも、そのようなことを・・・」
今までのコウモリ娘に関しての事実、スパイ行動と親の借金問題の事を説明し終えるとトリトハイムは愕然とした様子になる。
「トリトハイム詠師、よろしいですか。私がこの場で事実をお伝えしたのは、貴方が抑止力となるためですよ」
だが話を終えてないルークは優しく声をかけ気を確かにさせると、更に話を続ける。



・・・コウモリ娘をダアトから逃げ出さないよう、縛り付けるための話を。









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