焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

「「・・・!」」
処刑。誰よりもはっきり近くにいてその声に込められたルークの脅威を身に感じた老け髭達はなんとか逃げだそうと動こうとするが、リグレットは既に拘束されているためにバタバタするだけであるし、老け髭は立ち上がろうとした瞬間影分身兵士に押さえ込まれ苦悶のうめき声と表情を出してしまう。
「今更何をしているのですか、貴方方は」
その様子を見てルークは群衆から老け髭達へ視線を下げ、冷酷だとはっきり言える声色をわざと出す。
「罪には罰を・・・それは当たり前の事、貴方方はそんなことも知らずに生きてきた訳でもないでしょう。貴方方は誰に言っても胸を張れるような行動で預言をどうにかしようとしたのではなく、人道に基づかない行動をいくつも積み重ね害を及ぼしました。そして貴方方は罪を償うどころか、今この場において逃げだそうとまでしました。これはもう情状酌量の余地という物をとうに超えています、到底許される物ではありません」
「「・・・っ」」
‘‘‘‘・・・っ・・・’’’’
そして絶対零度の視線を明らかに見せつける事で老け髭達に戦慄を覚えさせ、群衆達は先程までとは違うルークの凛とした姿からの変貌振りにおののく様子を見せている。
・・・ここまで老け髭達に対し情けを見せてきたのだ、ここで罰に対して断固とした態度を取る事が国としては正しい物であることを群衆に認識させることが重要だ。罰の重みを群衆達が実際より軽く見てしまう事も有り得る、今現在当然の報いを受けてダメージを多大に食らっている修頭胸達のように・・・それは避けたかった為にルークは強硬的な態度を取ったのだが、効果は群衆達が恐怖を感じている事がわかるように成功だった。
「ただラルゴが貴方方を取り返しに来たのは想定外でしたが、そう遠くない内にラルゴの真意を問う為に捕縛に向かう予定でした。ですがこの場に人の迷惑を省みず来た事で今も尚、貴方方と強い協力関係を結んでいる事は明らかです・・・導師、予定にはありませんでしたが謡将とリグレットの二人と共にラルゴの処刑をすること・・・認めていただけますか?」
「!・・・はい・・・」
そして乱入させたラルゴも二人と一緒に処刑するようルークは老け髭からイオンにその視線を変えずに向け、脅すようイオンから強張った声の許可を取る。
「ありがとうございます・・・ではこれより、御三方の処刑を行いたいと思います。あまり血や人が死ぬといった場面に慣れていない方はこの場から離れてください、その場面を見学される方は気分が悪くなったとしても自己責任で対処をお願いします」
そして群衆達に振り返ると、ルークは真面目な声へと戻してから実質的な処刑の開始を告げる。
‘‘‘‘・・・っ・・・!’’’’
開始を告げるとルークは後ろを向いて各国代表者達に処刑台からの退場を手で丁寧に促す。そこから群衆達はザワザワと動きを見せている。流石に処刑の瞬間までも見たいと思う人間は全員ではなかったようで、少し人数が離れて行っている。



「よっと」
ナルトはそんな中で処刑台の上にラルゴを担ぎ上げてそこに置くと、処刑台に飛び上ると老け髭達の前に腰を落とす。
「どうかな、気分は?『愚かなレプリカルーク』に殺される気分は」
「・・・っ!」
そこにあったナルトの顔はうっすら目と口元を細める程度に笑む物だったが、老け髭はその言葉を聞いて目を大きく見開いてナルトを見ようとする。
「オッサン、あんたの最大の失敗は人を育てる事どころか自らの思考を根本的に改革すら出来なかった事。それに尽きるってばよ。今更言ったって全く無駄だけどね」
だがナルトは言いたい事は言ったとばかりに、老け髭の前から立ち上がりラルゴを二人の横に並べる作業へとその視線を気にせずに取り掛かる。



・・・『愚かなレプリカルーク』、これはルークにかけられた暗示の発動の為のキーワードだ。この言葉をキーワードにするにあたりどれだけレプリカという存在をはっきり下に見ているのかわかるだけに、暗示を解いた時にルークとナルトは老け髭を笑った・・・老け髭の言葉を借りるなら差し詰め老け髭は愚者に弄ばれる賢者、といった物だろう、今の状況は。

自らを上だと信じて疑わずにルークを見ようとも、考えを改めようともしなかった。賢者が聞いて呆れる、考えを変える事も出来ない者がどうして人をまともに育てる事が出来ようか?

・・・自身を過信しすぎていたからルークだけでなく、煙デコの洗脳すら出来なかった。自身にある人望はあくまで似たような気持ちを抱く者を集めたからであって、自身が人材を育てる事に長けていた訳ではない。そのことを勘違いし続けていたからこそ、今この事態は引き起こされた。他ならぬルークの手で。

今更であるがルーク達にとっては老け髭こそが、正しく愚者そのものだった。







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