「そこで事実を知ったヴァン謡将・・・ここでもっと別の行動を取っていたなら、今ここに謡将達はいなかったでしょう。ですが、そこから謡将が取った行動と決断はとても許せる物ではありませんでした。何故ならヴァン謡将が最終的な目標として掲げたのは、預言が詠まれる世界の滅亡であったからです」
‘世界滅亡！？’
だが老け髭をいい人で終わらせる気など毛頭どころか、原子核程もない。老け髭の目標をはっきりとルークは口にして、群衆達の同情をあっという間に引きはがす。
「そうです。創世歴からユリアにより預言が詠まれるようになって今日に到るまで、何度も大きな戦争が世界各地で起こってきました。しかしそれも全て、歴代の預言保守派の手により実行されてきてです。奪われる命があるとわかっていて、です・・・そしてそれはホド戦争を起こした行動からわかるように、何も預言通りにすることを見直さないまま、またホドを預言保守派は落としました。そしてホドが落ちてから大小関係なく起きてきた小競り合い・・・その小競り合いの中でこの魔弾のリグレットの弟も預言に詠まれた死により命を落としました」
「「！？」」
話の中からいきなり引き合いに自分の事を出されたリグレットと修頭胸の師弟コンビはルークを信じられない物を見上げるよう、視線を向ける。
「リグレットの弟というのは神託の盾に所属していたとのことでしたが、死ぬ事がわかっていた上で戦場に送られ・・・帰らぬ人となったとのこと。それからリグレットはそのような運命を詠んだ預言を憎むようになり、神託の盾で動いていた謡将は彼女を預言を壊す同志として迎え入れたとのことです」
「・・・！」
過去を暴露していくルークにリグレットは立ち上がりルークに向かおうとするが、瞬時に影分身兵士に取り押さえられ地に臥してしまう。
「いえ、彼女だけではありません。今この場に乱入しようとしたラルゴも彼らの配下の神託の盾兵士も、謡将の意志に付き従い行動しています。それもこれも全て、彼らが預言に対し強く想う所があるためです」
‘‘‘‘・・・’’’’
想う物、それはすなわち預言被害者の意識。預言を全ていいものだと認識してきた群衆達は被害者を目の当たりにして、かわいそうな物を見るようなんとも言えない表情となる。
「ですが、彼らの行動を行き過ぎた物だと考えたのがこちらにいる三人です。ルーク様をかどわかし、アクゼリュスを私に崩落させるために預言を欺く為とは言え同じように預言に死を詠まれた人々を殺し、挙げ句の果てにはその先に預言が詠まれている事が気に食わないと世界の滅亡を企む・・・事実、ラルゴはこのように人の集まる地であるというのにそれを省みず兵を引き連れヴァン謡将達を取り返しに来ました。それがうまくいったなら、この場がどれだけの惨事になるのかがわからない訳でもないはずなのに・・・」
‘‘‘‘・・・っ！’’’’
そこでルークはシンク達三人が義侠心を持って離れたと言うのと同時に、ラルゴがこの場に乱入してきたことからどれだけ本気なのかと嘆き顔を手で覆う。
（おー、大分事の重大さを身に染みてきてんな。まぁ流石に自分が死にそうってなりゃ当然だよな、それでこそラルゴを泳がしといた甲斐があるってもんだ）
その襲撃が成功していたら自分達はどうなっていたのか・・・想像に難くない想像を前に青い顔を見合わせ合う群衆達に、ルークは足元にうずくまるラルゴを手の下から見下ろしそっとほくそ笑む。



・・・そう、ラルゴの襲撃はあらかじめルーク達の予定した流れの中に組み込まれていた。老け髭達が処刑することを大々的に世界に流布したのは何も民衆に預言を詠まない流れを意識させるためだけでなく、むしろラルゴをケセドニアに呼び込む為だった。

それは何の為かと言えば、どれだけ老け髭達が本気であるのかを群衆達に身を以って理解するよう目の前でラルゴを捕まえる事で明らかにする為だ。情報を流せば忠誠心溢れる性格もあるが、セフィロト操作も自らには出来ないこともありラルゴは老け髭を奪いに来る・・・そう考えサフィールの情報から居場所を掴みあえて泳がしながら処刑の情報をラルゴに届くよう流したのだが、効果はてきめんで今ここにラルゴはここに来た。







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