焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

「ですが、これは一つの契機とも言えます。日を改めてからこの事実をお伝えしようかと思いましたが、今からヴァン謡将達が何故このようなことをしてまで預言から離れた行動を取ろうとしていたのか・・・お話したいと思います」
そのラルゴの乱入を時期なのだと捉えるような前向きな言葉でルークは前を向く。
「まずヴァン謡将が預言を欺こうと思ったきっかけですが、皆様は覚えておいででしょうか?昔のマルクト領にホド、という地があったことを」
「「!!」」
「ヴァン謡将はそのホドという地の出身です。そのきっかけはホドが消える前に起きたホド戦争にあります。ホドが消えた原因はキムラスカかマルクトかどちらに原因があったのか、そういった議論もなされて来ましたが真実はそうではありません。真実は当時の預言保守派がホドに神託の盾を送り込み、預言通りにホドにあったセフィロトを崩落させるために預言保守派がやったことなのです」
‘‘‘‘!?’’’’
老け髭達は出身地暴露の驚きにいる中、ルークは最大限に預言保守派の心証を下げる真実を告げる。群衆達の驚きもやはり一つランクが違うようで、もはや声も出て来ない。



・・・まぁ実際にホドを崩落させたのはマルクトが老け髭を使って擬似超振動を発生させたからと老け髭を吐かせて判明したことなのだが、神託の盾が派遣されて来てから戦争がより激しくなったとマクガヴァン元帥が言っていたので、マルクトが状況が不利になったと考えキムラスカにホドを渡すくらいなら・・・と考えさせる事態になるまでダアトが動いていたと考えると、全くの嘘ではない。

それにこの事実に関して、キムラスカとマルクトは預言保守派に是が非でも押し付けなければまたおかしなことになる。キムラスカはそこから預言保守派に繋がっていたと知られては厄介だし、マルクトはホドの消滅が自らが起こしたとなれば自国民に対して相当な負い目を作ることになる。そう考えればこの話を公式にした方が都合がいい両国に、断る理由はなかった。和平を結ぶ為の友好関係の潤滑油、預言の負債の一斉始末・・・どれも魅惑的が故に、ルークに両国は全面的に協力をしている。



「信じられないと思うのも当然だと思います、ですがそれが事実です。それに、その預言が詠まれた譜石の存在も確認しています」
そこでルークは更に譜石を手元から取り出し、群衆達にまざまざと見せる。また明らかになる物証に、ワンクッション置いている為か群衆達も懐疑的な視線も弱くなっている。
「ホド崩落の影に預言保守派の影・・・その当時のヴァン謡将はその神託の盾の動きに気付き、命からがらホドから逃げ出したそうです。後にディスト殿が聞いた話によると、そのように語っていたとのことで」
そこでルークは話をサフィールから又聞き話と言ったように繋げるが、老け髭は不本意だとでも言うように首を振っている。
・・・当たり前だが、話を捏造するのにルークがわざわざ老け髭の許可を取る訳もない。適当に話を作っていくルークの声は止まる事はない。
「ホド崩落後、ヴァン謡将は全てを確かめる為にホド出身という事を隠し神託の盾に入り表向きは敬謙なローレライ教団員として色々探り、そんな中で出会ったのが大詠師・・・」
話の点と点を繋ぐ、惑星屑との出会い。先程の話が効いているのか、群衆達は惑星屑の首の入った木箱を怪しそうに見る。
「謡将は大詠師を怪しいと践んでいた為にその近辺を調べていたそうです。そこで出たのがホドとアクゼリュスの事実・・・だそうです」
‘やっぱり・・・’
群衆の中から納得した声が聞こえてくると同時に、どこか同情的な視線が老け髭達に降り注ぐ。流石にホドという事情が同情心をくすぐっているのだろう、群衆の。







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