焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

「そもそもヴァン謡将がアクゼリュスに我々親善大使一行と共に行く事になったのは、大詠師が謡将にそう命じた事から始まります。そしてその時に大詠師は預言に私、正しくは本物のルーク様がアクゼリュスに行けば両国の繁栄が詠まれていると思えるような譜石を持って来ました。ですがこちらの三人から後に聞いたのは驚愕の事実でした・・・何故ならその預言の更に先を大詠師は知っていて、尚且つその中身はアクゼリュスを聖なる焔の光が消滅させるという物だったのですから」
‘‘‘‘!?’’’’’
「皆さんが驚くのも無理はありません。ですがヴァン謡将の行動もそう考えれば説明が着きました。アクゼリュス消滅が預言に詠まれているというのであれば、必然的にアクゼリュスに居続ければ住民の方々のその命運という物が自然と定まってきます。大詠師はアクゼリュス消滅をさせるにあたって、預言を詠んでも死ぬとしか詠まれないだろう住民を救う為に派遣した兵士を邪魔だと思ったのでしょう。現に大詠師は兵士を派遣するとなった時、兵士の名前が書かれたリストをファブレ公爵とインゴベルト陛下に渡したそうです。そうですね?ファブレ公爵」
「・・・うむ」
唐突に話を振られた公爵だが、事実は事実なので少しの間が空いて首を縦に振る。
「これは後々に判明したことですが、兵士の方々には今年大任があると詠まれていたそうですが、実際にはそのリストは今年死が詠まれていた人達を集めた物とわかりました」
‘‘‘‘!?’’’’
壮大に語られる惑星屑の徹底したゲスで異常預言マニアぶりに、さしもの預言を神格化している群衆達も盛大に引いている。流石に人の生き死にまでも預言で計られては、一般の感覚ではついていけないといった所だろう。
「大詠師は典型的な預言保守派であり、その考えは対立している改革派筆頭でありダアトの代表である導師イオンを軟禁するにいたる程です。そこまで徹底した預言保守派の大詠師は自身の配下であるヴァン謡将に兵士の抹殺を命じたのですが、アクゼリュスに派遣された時・・・いえ、それよりずっと前に謡将は大詠師の思惑を超えた行動を取っていました。それがルーク様をかどわかし、レプリカである私達を作った事です」
惑星屑の心証を軒並み下げた後は老け髭の番。ルークは敵意剥き出しの老け髭達二人を見下すようにしながら、話を続ける。
「聖なる焔の光、つまりルーク様のその身を謡将が欲した理由とは預言に詠まれた存在でありその体を構成する音素振動数がローレライと同じ事にあります」
‘音素振動数が?’
「ローレライと音素振動数が同じ、それが何を示すのか。それは特定条件下以外に起きないと言われる超振動を単体で使える存在だということです」
‘超振動!?’
超振動という単語に群衆達が一気にざわめきだす。
そもそもが‘ルーク’という人間が超振動を使える事実は、監禁されていたという経緯が経緯なだけに知っている者はほとんどいない。そしてその経緯とは超振動狙いの輩から‘ルーク’を守るという、過保護以下の束縛に他ならない。
・・・最もその束縛もルークには全く意味が無かったし、その束縛が形を変えて煙デコに降り懸かって来るのだからそれでよしとしておく。
「そんなルーク様はアクゼリュスを消滅させると預言にあると言いましたが、同時にアクゼリュスと一緒に消滅するともありました。ヴァン謡将はその預言で超振動を単体で使える存在が失われるのを惜しみ、私をファブレに身代わりに置いたのです」
‘そんなことを・・・’
群衆がルークに同情、老け髭を攻めるような視線を半々に送りながら二人を批難するような声をポツポツ上げている。だが老け髭達はそんな視線に対し、余裕の笑みを浮かべている。この程度では面の皮の厚い老け髭達は心は揺れないのだろう。








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