焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

ルークの通る声にこのために集まった人々は一斉に静まり返る。だがその群衆の一角はルーク達の出て来たアスターの屋敷の方にヒソヒソ話を周りにしながら指を指す。そこにあった姿は・・・
‘おい、あれ。ヴァン謡将じゃないのか・・・?’
‘隣にいるのは・・・確か、六神将の魔弾のリグレット・・・リグレットも関係しているのか・・・?’
ヒソヒソ話から聞こえた群衆の声は次第に周りに伝染していき、アスターの屋敷から出て来る二人の方に自然と視線が集中する。
二人は縄で体を拘束され、口元はさるぐつわで喋れないようにされて影分身が扮する兵士に先導されて歩かされている。老け髭の足元はおぼつかない様子で、歩くのが辛そうにしながらヒョコヒョコとしたように歩いている。



そして影分身兵士が処刑台まで二人を上がらせて最前列にいるルークの隣に座らせると、ルークは二人と軽く視線を合わせる。
(おー、人を殺せそうな視線だな。ま、てめぇら程度じゃカマ蛇にすら及ばないけど)
すると返ってきたのは敵意しかギラギラとしか感じられない視線が二つ。まぁそんな視線は腐る程見てきて慣れている上、その生きた視線が後々の展開に活かされて来ると考えているルーク。
(いいぜ、そんままでいろよ?じゃねぇと、わざわざ前日に起きてもらった意味がねぇんだからな)
・・・そう、ルークとナルトはあえて老け髭達二人をこの処刑の前日に幻術を解いて二人の処刑をすることを伝えた。ただ、あくまでも処刑をすることだけを伝え・・・
その後、二人からルーク達は離れていたずらに二人に情報を与えなかった。恐らく今の老け髭達の心の中は色々な憶測が飛び交っている事だろう・・・
(さ、絶望と終焉を受け入れる時間の始まりだ)
そしてそんな状態だからこそ、憶測の域から一歩出た先の事実に気付けずに老け髭達を利用できる。
表向き老け髭達に何も反応を返す事なくルークは前を向き、群衆へ話し出す。



「この場にお集まりいただいた皆様、ヴァン謡将が何故このように処刑台に乗せられているのか・・・理解できないという方もおられる事でしょう。そこでまずはヴァン謡将の行動についてお話致します・・・まずヴァン謡将がこのように捕えられるきっかけとなったのはアクゼリュスにて、キムラスカの兵士を謡将が襲った事からです」
‘‘‘‘!?’’’’
「恐らく皆様にはほとんど知られていないと思いますが、ヴァン謡将がアクゼリュスに向かった訳というのはマルクトとキムラスカの間で和平の話し合いがされたことから始まります」
‘和平!?キムラスカとマルクトが!?‘
「そうです、マルクトから持ち出された和平。その申し出にキムラスカは答えようと和平の条件でもあった障気に苦しむアクゼリュスの住民を救助するため私を始めとする親善大使一行、それにダアトからの代表としてヴァン謡将を派遣しました。その時にキムラスカから一緒に兵士の方々も派遣されたですが、そこで我々が目撃したのはヴァン謡将が共に先行していた兵士の方を襲うという凶行・・・」
‘そんなことが・・・’
まずは兵士が襲われた事を言ってから和平の話があったことを話す。やはり和平という話し合いがあった事実には驚きの声が上がったが、障気が出たという発言から群衆の目が老け髭を批難するような視線へと変わり出した。
「当然、ヴァン謡将を捕らえた我々はそのような行動に出た理由を知りたいと思いました。しかしそんなに時間を空ける事もなくやって来た六神将からその答えを聞く事が出来ました。その答えというのは恐らく皆様も聞いているとは思いますが、アクゼリュスがいきなり消えた事に関係しています」
‘あれに・・・?’
「その答えは、謡将がアクゼリュスをその時に消そうと考えていたからです」
‘‘‘‘!?’’’’
アクゼリュスを消滅させようとした。その言葉に有り得ないといわんばかりに群衆がざわつきだす。
「皆様方が信じられないというのはわかります。ですのでこれより我々が知ったこの大地の事実をお話します・・・」
そのざわつく声を制するよう、ルークは外殻大地の事実を語りだす・・・








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