焔と渦巻く忍法帖 第四話

(うわ、鬼でも蛇でもなく狸が出てきやがった)
そうルークが思った相手・・・それは今目の前にいる青い軍服を来た眼鏡軍人である。






強制連行された先でのローズという女の人と男の会話で軍のお偉いさんが来ていると言ったので、ルークはどのような人物だろうかとその軍人の方を見ると、一瞬でルークは全体の性格を予想出来るうすら寒い笑みを目撃してしまった。それが先程の冒頭部分にあたる。
笑みを見ただけで性格が分かるというのは行き過ぎではないかと思われるが、あの笑みには見覚えがルークにはある。
(老け髭と同じ笑みを浮かべんな。ムカつく)
決して本心を見せない形だけの笑み、口元だけを笑わせた笑み、どんなに笑っていても決して目は笑っていない笑み、老け髭との接触の時には必ずこの笑みをルークは見ていた。ルークには絶対的な経験があった。だからこそこの軍人が浮かべる笑みから老け髭とガイと同じ匂いを感じていた。
(営業スマイルだけを張り付けた顔なんて逆に分かりやすいんだよ)
本心を見せたくないならもう少し勉強しろよ、ルークは目の前の未熟な狸軍人に心の中でダメだしをした。



「マルクト帝国軍第三師団所属ジェイド・カーティス大佐です。失礼ですが、貴女方のお名前は?」
話が進み、暗に身分を明かせという含みが入った質問がルーク達に投げ掛けられてきた。そう質問する直前にルークは自分を観察するかの様な視線を眼鏡狸から感じていた。恐らくキムラスカ関係者ではないかと気付いたのだろうとルークは思っていた。その質問に対しての答えは、
「リー、ロック・リーだ」
・・・偽名。敢えて偽名に選んだのがロック・リーなのはこちらでの名前でも違和感が少ない人物だったというだけである。
「ルーク!!嘘はつかないで!!すみません、大佐。彼はルーク、私はティアです」
そのティアの言葉を聞いた瞬間、ナルトからほんの一瞬だけ殺気が出ていたのをルークは感じていた。
(ま、ムカつくわな)
偽名を使った理由、それを理解しようとせずに馬鹿正直に名前を明かす愚を犯す。ちょっと考えればすぐに理解出来る事を何も考えずに発言する、ルークの思考を汲み取ろうとせずに発言したことにナルトはいらついたのだ。
それを裏付けるかの如く、眼鏡狸は目を細めルークを改めて観察している。
(気付いたな)
下らない輩に目をつけられた、ルークは今更ながらに面倒だと心で呟いた。



「食糧泥棒はそちらの方々ではありませんよ」
「イオン様」
(イオン?もしかしてこいつが老け髭の言っていた導師か?)
突然現れた深緑の髪の少年。その立ち振る舞いに周りが敬意をもって接している事からルークはイオンだろうと予測した。
「食糧庫を調べたらこの毛が落ちていました。恐らく食糧泥棒の犯人はチーグルでしょう」
その事実を聞いた村人達はバツが悪そうにルーク達に謝罪してきた。
(村の住人じゃねぇイオンが事件を解決ってどうよ)
もっと冷静になっていれば住人達が問題を解決出来ていただろう、ルークはそう思った。




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