焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

・・・そして屋敷を出てから、入口付近でルークは立ち止まりイオンに振り返る。
「さぁダアトに行こうぜ。適当に詠師陣にも話通して、その場に来てくれる人を選出しねーと。その場面を見て事態をちゃんと理解してもらうためにな」
「はい・・・」
イオンに確かめるでもないダアト行きを告げて了承を取ると、近くに来た影分身にその身を担がせルークはその場から消え去る。
・・・そう、十日という時間は各国からイオン達以外の重要地位にいる人物を引っ張り出す為の時間でもある。キムラスカはナルトに任せて問題ないだろうし、マルクトは断る理由と見届けない理由がない。後残るのはダアトで、そこから実質的No.2の人間達である詠師陣から誰かを引っ張ってくれればそれで事は足りる事になる。だからこそルークはダアトに行くのだ、手を成す為に・・・









・・・そしてそんな風にルーク達が動いている間にも、影も動いていた。



「おい、聞いたか?ヴァン謡将がケセドニアで処刑されるって話・・・」
「えっ?ヴァン謡将ってダアトの神託の盾の総長だろ?どういうことだよ?」
「いやな、噂によるとさ。最近アクゼリュスがなんか消えたってよく話になってるだろ?俺が聞いた話だとさ、なんかヴァン謡将が関わってるらしいんだよ」
「そうなのか!?」
「詳しくは知らないけどなんかキムラスカとマルクトの間で色々あったらしくて、それでヴァン謡将がアクゼリュスでって話らしいんだけど・・・公開処刑にするまでの処分なんだぞ。それくらいでかい事やっててもおかしくないとは思わないか?」
「まぁ確かにな・・・」
「その辺も併せて色々説明してくれると思うしな・・・俺は処刑の場面を見にケセドニアに行こうと思ってるんだけど、お前はどうする?」
「俺か・・・俺も見に行こうかな・・・」



・・・これはケセドニアから打ち合わせを終えた後、数日後のオアシスで影分身が扮した傭兵風の男性とそこにいた適当な男との会話である。

ナルトの影分身達は各地を飛び回り、色々な姿形の人達に変化して噂をどんどんと広めていった。その噂の効果は・・・抜群だった。何故なら噂が二段階に分かれて、まかれたからである。

これが老け髭の処刑の噂だけだったなら正直な所、関心はそこまで引けなかっただろう。だがアクゼリュスが崩落したという紛れも無い事実があることが人々の興味を引き立てた。かつてない事態が起きた上に、それに関係する人間の処刑・・・時間を置いて十分にアクゼリュス崩落の情報が広がった所に、老け髭の登場・・・人々が興味を引かれないはずがなかった。

噂は噂を呼び、噂を確かめに街を出る・・・国を問わずほとんどの街には老け髭の処刑の噂を知らない者はいない程となり、興味を強く持って動ける者達は一路ケセドニアへ続々と向かっていっている・・・



・・・そしてそんな中で、ルーク達の思う展開に必要な事にも情報は知れ渡る物となっていった・・・












・・・そして十日後のケセドニア、合流を果たしたルーク達はアスターの屋敷にて各国から送られて来た代表達と顔を合わせていた。







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