焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

・・・そしてルーク達は一路ラジエイトゲートからケセドニアに向かい、一日半もするころにはケセドニアへと到着した。



ケセドニアにたどり着き、ルーク達が向かったのは街の中でも一際大きい建物で街の代表が住んでいる所。外観に引けを取らずに内装もきらびやかに統制された屋敷の中でイオンの来訪をメイドに告げて、主の男性が来るのをルーク達は待っていた。
「イヒヒ、お待たせしました。イオン様」
するとソファーに座っていたルーク達の前に、屋敷の奥からインチキそうなチョビ髭を携えたターバンを巻いた中年男性が現れた。
(まーたなんつーか・・・あからさまに怪しい商人だな、オイ。まぁこんな顔つきなら怪し過ぎて逆に商人としちゃ武器になんのかもな。ま、こんだけでかい街の代表者になれてんだから本人の才覚もあんだろうけど)
そんな雰囲気にルークは商人として成功するにはこれくらいの顔つきの方がいいのではと、少し脇道に逸れた思考を持つ。
「あ、いえ・・・わざわざ忙しい所すみません、アスター」
「いえいえ、ご用件はわかっています。キムラスカとマルクトでダアトでヴァン謡将の処刑をするためとある宣言をするよう、ケセドニアを使うための打ち合わせで来られたのですよね?」
「あ、はい・・・」
アスターと呼ばれた男性に頭を軽く下げたイオンは、アスターから連絡は受けていると言われて軽く出鼻をくじかれる。
「その点ですが、ケセドニアでやることについては問題はございません。舞台に関しては我々がセッティング致しますので、後はその日取りを決めるだけでございます。いつにされるかはお決まりですか?」
「えっ、それは・・・」
その処刑の問題についてまるでビジネスをしているような早い話し口にイオンはどうするのかと、ルークに視線で求めて来る。
「そうですね・・・十日後でいかがですか?それまでには三国でも処刑に対しての準備が出来ると思いますの、十日後に合わせる形で用意していただけるとありがたいのですが」
「十日後ですね、わかりました。用意させていただきます」
そんな視線にルークはイオンを助けるよう、アスターとビジネスをするかのように条件を挙げる。アスターはその条件に即決で肯定を返す。



(やりやすいなー、このオッサン)
そんなアスターという人物に少ししか会話をしていないにも関わらず、ルークは好印象を抱く。
(全部、色々なしがらみをビジネスライクで片付けるタイプだな。その癖して判断力もあるし、商人としての能力も悪くねー)
怪しい外見に媚びるような態度であるのに、行動が早く理解が早い。そしてルークが何より気に入ったのは老け髭を処刑するのを、いたって冷静に捉らえているところだ。
忍に舞い込む依頼はビジネスライクで行っている。ビジネスライクでやっているのは下手にのめり込み過ぎては冷静な判断力を殺し、任務の失敗を招きやすいからだ。少なくともナルトは表のドベの顔はともかく、素では任務に集中はしても周りが見えなくなる程のめり込む事はない。それが確実な任務遂行の道だと信じているからだ。
そして同様にダアトの許可を得て自治区として存在しているケセドニアの代表のアスター。本来この世界にいる人間ならダアトの揉め事に関してはセントビナーでの時のように見て見ぬ振りをして関わりを避けるべきなのであるが、アスターは下手に詮索しないだけでなくまるでそれが当然の事のように何も気にせず受け止めている。
その姿勢はルーク達のようにビジネスライクでやる任務に通じる物がある。と、同時にそれはある推測にも繋がる。
(このオッサン、預言詠めなくなっても別にへこたれそうにねーな。むしろパワーアップしそうだ)
下手に入れ込む事もなくダアトの導師にも媚びを入れつつも、遠慮という物をしていない。商人特有のバイタリティを遺憾無く発揮するその姿に、預言をダアトが詠まなくなっても最初は戸惑いこそすれどすぐに順応してケセドニアを大きく発展させる様子をルークは思い浮かべた。



「それではアスター殿、我々は準備の為にダアトに戻らせていただきます。ヴァン謡将の処刑の舞台の用意をよろしくお願いします。あぁそれと箝口令は敷かないで下さい、むしろ皆さんに話が通るように噂を流しておいてもらってよろしいですか?下手に訳を言わずに沈黙したら公開処刑の意味がなくなりますので」
「イヒヒ、わかりました。お気をつけて戻られてください」
そんな出来ると思った人物だからこそルークは遠回しに物事を言わず、噂を流せるような状況に持ち込ませるように頼みを入れる。それにこれまたすぐに独特の笑いで肯定を返すアスター。
「ありがとうございます、それでは・・・」
満足な答えを聞けたルークは一礼すると、イオンとともに屋敷を退出していく・・・










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