焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

「そうやって自分のせいでルークや色んな人を巻き込んでおいて、身内だけの問題で終わらせようとした。けどもうお前の兄貴の引き起こした問題は止めらんないってば。それ止めたいんなら今度こそ死ぬ覚悟で俺達にかかってこい、ケセドニアにいるだろうお前の過ちで大切な物を失った人達の前で盛大に死にたいならな・・・どうする?姉ちゃん?」
「・・・っ・・・!」
「・・・返事は無し、か。大した兄妹愛だってば、ヘドが出てしかたねーよ」
そして中途半端だからこそ、その想いに苦悶し続ける罰をナルトは口にする。当の本人は全く返事をせずに視線を下にさ迷わせるばかりで、ナルトは皮肉を残して見向きもせずに場から立ち去っていく・・・



・・・そもそも互いの認識が中途半端と言った理由、それは互いが互いの認識を相手に押し付けた為だ。

修頭胸の観点から言えば老け髭の印象から強く優しい兄がまさか、そんなことするはずがないと言った半信半疑の気持ちで食ってかかっていた事だろう。

老け髭の観点から言えば修頭胸の印象から妹は自分を信じている、昔のように接していれば大丈夫だろうと考えていた事だろう。

だがその互いの認識は過去のまま止まった。そして修頭胸に到っては恐らくどころではなく、確実に老け髭の修頭胸に対する認識のままで精神は成長せずに体だけ大きくなったのだろう。でなければあまり顔を合わせていないはずの両者の一方だけが手玉に簡単に取られる事は考えにくい。

そしてそんな無駄な成長を遂げた修頭胸は、罪の実態と身内の失態をごちゃまぜにして自身の考えを正しいものと勝手に断じるようになった・・・今のように老け髭を中途半端に庇おうと、間違った意識を未だ持つ程に。



(そうやって自分の思った事が正解だって断じてきて生きてきた。兄貴の過ちを止めようと善行をしようとしたんだ、なら妹の過ちを止めるのは兄貴の役目だろ。これからはありがたく兄貴の教えを受けながら生きていくんだな・・・)
ブリッジに歩きながらナルトは思う。これからが修頭胸に対しての罰の本番、そしてその罰は他ならぬ老け髭が与える物・・・
それからの事を考えていくと、ナルトの口元には愉快そうな口角が浮かび上がっていった・・・















・・・一方その頃のルーク達はセフィロトがある土地の一つ、メジオラ高原に来ていた。



「・・・っ!・・・はぁ、はぁ・・・」
迷路のように入り組んだ地形の高原の中、大地に埋もれているかのようにセフィロトへと続く扉の前。目の前の扉が封呪の解除で何か高い音を立てて消えるとほぼ同時に、イオンは疲れを一気に出したように顔色を悪くし冷や汗を浮かばせる。
「ほら、兵糧丸だ」
その様子にルークは全く心配する様子を見せずにイオンに近づき、兵糧丸を取り出しイオンに手渡す。
「んっ・・・んぐ・・・ふぅ・・・」
渡された兵糧丸を口に入れてポリポリと咀嚼したイオンはそれを飲み込む。するとイオンの表情は全快とまでは行かずとも、明らかに食べる前よりは顔色がよくなっている。
「よっし、んじゃ行くぞ。ここ終わったらシェリダン行くから文句は無しだ」
「・・・はい」
それを見届けたルークは影分身にイオンを担がせ、問答無用に中に入る事を告げる。拒否権のないイオンは頷くばかりで、セフィロトの中へと連れていかれる・・・



ルークがイオンに兵糧丸を渡した理由は、セフィロトへと続く扉を開ける時に使うダアト式譜術で著しく体力を消耗してしまう事を考えいち早く体力を回復してもらうためだ。

流石に一回ダアト式譜術を使うだけで相当に体力を削られる状況で、ルークは連続でイオンにダアト式譜術を使わせる気はない。故に兵糧丸を渡して体力の回復を今まで図ってきた。それで兵糧丸の効果は覿面で、セフィロトからセフィロトに行くまでの間にたいていイオンの体力は宿に泊まらずとも全快くらいには回復していた。まぁ投薬のような形で体力回復を図るのはなんなので、今ルークが言ったように時たま街に寄り休息は取るようにはしている。



そんな風にしつつ、ルーク達はイオンの体力をそこまで重要視せずにセフィロト巡りをしてきた。そして老け髭の体調の事も全く重要視せず・・・









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