焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

「これが、予定している流れになります」
ここでナルトはこれ以上流れについて話をする気もなく、話題転換に入る。
「もちろんこの話はグランコクマのピオニー陛下にもお話を通し、了承を得たいと思っています。そしてピオニー陛下から了解と返ってきたならすぐさまケセドニアを使わせていただけるように交渉していただきたいのです、ヴァン謡将の処刑の場として使えるように」
「・・・そして交渉が成功したならヴァンの処刑、か・・・」
「はい、そうです。大丈夫です、陛下。私の予見通りに事が進めば問題は出はしません、つまりキムラスカには害は出ないのですから」
ナルトは笑顔を見せながらインゴベルトを励ますように言葉をかける。
「兄、さんが・・・」
だがやはり兄の処刑という事実を受け止めきれないのか、後ろから修頭胸の呆然とした声がナルトの耳に届いてくる。
「・・・陛下、後の処置は私が行います。またグランコクマからの返事が届きましたら、こちらに来たいと思います」
「う、うむ・・・」
そんな声にナルトはとっとと終わらせようとまた来ることを告げ、口ごもるインゴベルトに頭を下げる。
「では、失礼します・・・」
別れの挨拶を切り出しナルトは後ろを向くとさっさと行くぞと、特に修頭胸に視線を向けてから退出していく。その姿に全員何も言わずに、ただナルトの後を追っていく・・・












そしてタルタロスに戻ったナルト達。ナルトは自らの影分身兵士をグランコクマに向かわせるのを見届けると突然に変化を解き、ナルトは後ろに待機していた修頭胸の方へ向く。
「さてと、何の用だってばよ」
ナルトは修頭胸に質問をしてはいるが、特に関心を寄せてはいない。何故なら中身は、もう予想はついているから。
「・・・なんで、貴方達は、兄さんを処刑なんかするの・・・?」
だがその予想があまりにも正解過ぎて、たまらずナルトは弱く責めるような声の修頭胸に向かって思いっきり顔をしかめる。
「なんでもくそもねーだろ。罪があんのは知ってんだろ、色々やってたんだからな。それに全容は知らなくても何か兄貴がやってるって不穏な気配くらいは感じてたから、公爵の所っていう無意味な所でわざわざ兄貴襲ったんじゃないのかってば?」
「!?うっ・・・」
兄髭の当然の罪状と、数日間ずっと苦しむ程場所を考えなかった自身の無知さ。二つ掛け合わせたナルトの反論に途端に修頭胸は一瞬で言葉に詰まり、顔を背ける。
「大体なんで殺そうとした相手が死ぬってのに、それを受け入れる事が出来ねーんだよ。理由を言ってみろ、おい・・・」
だがナルトはその修頭胸の眼前に近づくと、明らかに苛立っている声で両頬を覆うよう手を沿え、顔を無理矢理突き合わせる。
「それ、は・・・兄、さんを止める、のは、妹の私がやるべきだと、思って・・・だからそれで・・・」
苛立ちにあてられたのか、その苛立ちとは程遠い冷たく打ち据える表情に恐怖したのか。ぶつぶつに言葉を切りながら、修頭胸は必死に視線を一定に留まらせないようにしながら声を出す。
だがそんな声にナルトは手を離し、後ろを向く。
「くっだんねー。結局血の繋がりがあるって理由だけじゃん。んなことで一々反感持ってんじゃねーよ、結果止まりゃそれでいいじゃん・・・ホンット、くだんねー」
吐き捨てるように言葉を紡ぐナルトはまた修頭胸へと首だけ向ける。
「そんなに殺す程止めたかったんなら、お前に殺させてやろうか?お前の大好きな兄貴をな」
「!!」
「・・・フン」
処刑をやらせようかと言いだしたナルト。だが修頭胸は元々悪かった顔色を更に青ざめさせるばかりで、答えを返せない。そんな様子にナルトは興味を無くした様子で鼻で笑い、今度こそ前を向く。
「殺したいのに、人にはそれを任せたくない。けど実際に殺せるなら、戸惑う。兄貴を殺すって思いながら、お前は心のかなり大部分で兄貴を信じてたんだろ。兄貴を襲った時もどこかすぐに謝ってくれれば話を聞こうと思っていた、それは旅の中で徐々に軟化して行った髭オッサンへの態度を見りゃ明らかだ。そんな奴の為に公爵の屋敷を守ってた兵士の人達は無駄に死んだんだ・・・哀れで仕方ないってばよ」
「っ!!」
ナルトの言葉は確かに弱体化した修頭胸の心を突き刺した。痛烈な話に修頭胸は膝を落とし、地面に膝立ちになってしまう。



愛が殺意に変わる、は突き詰めて行けば十分に有り得る事だ。好きだからこそ許せない、その話はサスケがいい例だろう。サスケは元々イタチを好いていたのだから。

そういった観点で言えば老け髭兄妹も愛が殺意に変わる、と言えるのだが全てが中途半端な位置にあるのだ。愛も、殺意も、そして互いの認識も・・・







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