焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

「ヴァン謡将を両国に引き渡すと言った理由、それは端的に言ってしまえばみせしめにするためです。宣言を本気だと人々に認識してもらうための人員材料としてね」
「材料だと・・・?随分と不穏な響きに聞こえるが、実際にはどのようにヴァンを扱うというのだ?」
ナルトからあまりにも当然に老け髭をぞんざいに扱う発言が出て来た事に、インゴベルトは不気味そうにそのやり方を問う。






・・・その質問にナルトから出た答えはインゴベルトだけでなく、修頭胸を特に衝撃に満ちた物に導く物だった。






「処刑するんですよ、ヴァン謡将を」






「「「「っ!?」」」」
淡々と告げたナルトの言葉は場にいたメンツ全てに驚きをもたらした。
「に、兄さん、を・・・処刑・・・?」
だがそんな驚きに満ちた面々の中で著しい反応を見せたのは、弱りきって生きた死体にも等しい状態にまで成り下がっていた修頭胸。弱々しく独り言を言いながら、ナルトの後ろ姿を幽鬼のような顔で見ている。
「・・・処刑、とは、どうしてそこまでやるんだ・・・?」
だがインゴベルトは余程衝撃が強かったのか修頭胸に気を回せず、所々とぎれとぎれになりながらナルトを恐ろしい物を見る目で見てくる。
「言ったでしょう、預言を詠めなくするためです。それにヴァン謡将を処刑して預言を詠まない事を宣言する過程の中に、大詠師の死を発表するための手順も含まれているんですよ?」
「・・・何?」
「まず宣言をする際には預言を詠む大元のダアトから反発がないようにしなければなりません。まぁトップの導師の意志確認は問題なく取れますが、問題は預言を信じられなくなるという風に考えるようになったきっかけを明かす時です」
「むぅ・・・確かに反発が起こりかねんな・・・」
だがナルトからキムラスカのアキレス腱とも言える惑星屑の死を片付ける方法があると言われ、インゴベルトは途端に表情を引き締めナルトの話を受け止めて行く。小さく体を震えさせる、修頭胸を視界には止めずに。



「そういった時にまず預言を詠まない事を明かさず、ヴァン謡将を表舞台に引き上げます。この舞台は、ケセドニアです。こう言ったシチュエーションは中立的立場に立てる地が適任です、ダアトはそういった点では中立に立てるとは思えませんからね」
「ケセドニアか・・・」
「そう、ケセドニアでまずヴァン謡将の犯した罪の一部を明かします。そして両国共に罪を裁く立場となっていると人々に印象づけられたなら、大詠師の話をこう切り出します。‘大詠師は預言を知っていた‘、と。そしてその後にヴァン謡将は更にその先の預言を知っていて、私とルーク様が入れ替えられた問題のレプリカ技術の事と外殻大地の事実を切り出します。そうすれば人々の心には少なからずその預言の中身が衝撃をもたらします、信じるか信じないかは別ですけど。ですがその時にはもうアクゼリュスは崩落した後です、恐らくは信じる人の方が多いでしょうがね」
「ふむ・・・」
「そんな中で明かすんです、大詠師が死んだ事を。明かし方は簡単に言えば、乱心と言うんです。ヴァン謡将を自分の手駒と思っていたらまさか謡将が預言の中身を知っていて、更にそのような行動を取っていた事を知らなかった、しかも預言を完遂させようと密かに動いていた事がばれた・・・そんな中で彼が取った行動は全てを知ったインゴベルト陛下に隠し持っていた短剣を取り出し、襲い掛かった。そしてそれをやむなく兵士が撃退した時に死亡した、といった風にね」
「・・・確かに話を聞けばモースがわしを脅そうと自棄になってもおかしくはないが、反発は起こりえないとは言い切れんのではないか?それでは・・・」
ナルトの話を邪魔する事もなく聞いていたインゴベルト。だが説明の中で惑星屑の死をごまかし反発を無くす為の計画に疑問の声をあげる。
「ご安心ください、陛下。その問題はたいして気にするようなものではありません。また別の流れで懸念を晴らすように考えております」
だがそこはナルトにルーク、抜かりはない。微笑を浮かべナルトは会釈のように軽く頭を下げる。
「・・・して、その流れとは・・・?」
「すみません、陛下。その流れに関しては陛下にもお話することが出来ません。私の予定する流れは私とナルト以外が知っていては、流れが狂いかねませんので」
「?・・・そうか」
だが続いたインゴベルトからの流れの説明を求める声に、今度はナルトは済まなそうに深く頭を下げる。インゴベルトも疑問の顔を浮かべるが、ルークに逆らえるはずもない為に頷きを入れるばかり。



・・・そう、知られては崩れかねないのだ。演技など特に出来そうもない、感情表現がそのまましか表せない修頭胸達が知ってしまっては。









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