焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

「マルクトとダアトと一緒に宣言・・・!?」
「ええ、民と国がこの話の理解を得るには姿勢が必要です。それに外殻大地降下に関しては国で溜め込んでいい問題ではありませんし、勝手に外殻大地の降下を勝手に行ったなら国の首脳陣はともかく民達の混乱を煽る事になります。そのような事態を招かない為には三国が真摯に受け止めて対応しなければいけないと認識するほどの、強い意志の篭った姿勢が大切です」
「・・・だから三国で宣言する必要があると言うのか・・・?」
インゴベルトはそこまで聞くと、宣言に対し乗り気でないような懐疑的な顔を見せる。
「覚えていますか、陛下?ここで誰が死んだかを」
しかしどういった気持ちで発言を受け止めているか、それは起こった事実を引き合いに出してナルトは危険性を述べていく。
「!それは、モース・・・」
「そうですよね?陛下は大詠師が死んだ意味をまだ理解していない。今はまだ大詠師の死は一部の者以外には一切公表されていません。ですが流石に大詠師の所在がどこにあるのか・・・それが教団員の間で噂になっていてもおかしくない。そしてその噂から発展して、大詠師がいつまでも帰ってこないことを訝しむ声が教団員から続々と出て来るでしょう。その時詮索されたなら出て来る事実はバチカルに大詠師がいたという、事実・・・」
「・・・っ!」
「今この場だから話しますが、大詠師の事実は近々発表したいと思っています。人々からの反感を買わないやり方で。ですがそれはあくまでも三国共同の宣言があってこそ成り立つ物であり、別の策を練る為に時間を取りすぎても大詠師の噂が立ってしまえばキムラスカにいらぬ詮索が立つでしょうねぇ・・・」
「・・・っっ!!」
ナルトはルークとはまた違う圧力のある、言葉に込めた明らかな脅しを持ってインゴベルトを攻める。



詠師陣ですら惑星屑の行方をバチカルに行ったとしか知らずにいたのだ、一般教団員はまずバチカルにいたことすら知らない者はいくらでもいるだろう。

そんな中で大詠師がいつまで経ってもダアトに戻らず、かつバチカルで消息を絶ったなら・・・いずれ大詠師がバチカルで殺されたなどと噂が立ちかねない。

一つの可能性として惑星屑がキムラスカに亡命したなんて噂も立つ可能性があるが、惑星屑はもう死んでいる・・・それは変えられない。亡命というからには大詠師の地位にいたからには生活がある程度保障された状態が予想できる。だが惑星屑がキムラスカのどこにもいないとなったら、亡命の可能性も消える。

このことからダアトの人間は教団員が大詠師死亡説を流し始め、その噂を信じ始めるだろう。そうなったらキムラスカは惑星屑の死を正式に発表しなければならなくなり、同時に共同体制を取っていなかった事で一躍ダアトと険悪な関係に陥る事は確実だ。そう、まるで対策を取っていなかったら戦争になる可能性まで否定出来ない・・・



「さて・・・改めて今の話を踏まえて聞きます。陛下、三国協力の元、預言廃止の宣言をされたいとお考えですか?」
そして惑星屑を殺した当の本人、ナルトはいたって冷静にルークの顔で最後通告に等しい選択の余地を与える。だがこの質問はもう意味をほとんど成していない、なぜならインゴベルトという人物はもう堕ちきっているのだから。
「・・・共同体制を取ればモースの死が動揺なく収まる、というのであればわしに断る理由はない。宣言をすることを誓おう」
質問の答えは憔悴しながらも、遠回しにルークに逆らわない事を含みながらインゴベルトは宣言をすることを誓う。
そう、もうインゴベルトは堕ちているのだ。ルークの力の下僕に・・・



「そうですか・・・でしたらもういいでしょうからね、お話しましょう。先程の話のグランコクマでも言いました、ヴァン謡将を両国に引き渡すという意味の真意を」
一応の許可は取れた、だからこれから話す話は老け髭の最終的な末路をどういった風に国をあげて協力してもらうか。
ナルトは早速、弱った様子を見せるインゴベルトに話を切り出す。









9/29ページ
スキ