焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

「今アクゼリュスの大地を降下させたとしてもそこに待っている物は、魔界にある液状化した大地。その大地に降下したなら少なくともしばらくの間、アクゼリュスの地は液状化の影響を受ける事になります。更にはアクゼリュスの地は障気が吹き出してから大分時間が経っている事でしょう。アクゼリュスの地は今の時点でも障気によって土壌が大分汚されていることに加え、液状化した大地に降下したならアクゼリュスの地が再生不可能な程土壌が汚れる可能性があります。長い間土壌が汚されればまず人が住めなくなる環境になるのはもちろんの事、アクゼリュスで採掘出来る鉱石に関しても障気に犯され使い物にならなくなり屑石同然程度の価値しかない物となるでしょう」
「なっ・・・!?」
アクゼリュスを降下させることの無為を諭す為に話すルークの論に、ゼーゼマンと呼ばれた老人が愕然とする。
「更に言うなら液状化した大地をどうにかする方法はないことはないんですが、今それを行うにはこの場には必要な物が絶対的に足りません」
「液状化した大地を元に戻す方法があるのか?」
「はい、ここに。この本はダアトにあった禁書で、シンク殿が持って来てくれたものです」
「え・・・?」
ルークの話の途中に出てきた液状化制止の話にピオニーは食いつき、ルークは手元から禁書と言った本を取り出す。だがその禁書という言葉にイオンは聞いていないと言った戸惑いの表情になるが、それは当然だ。シンクはその禁書をルーク達が迎えに来る前に探し出し、無断で拝借してきたのだからイオンが知らないのは当たり前の事。



しかし今必要なのはイオンの反応ではない、アクゼリュス崩落を正当化させるための弁を述べる事だ。
「この禁書には科学的に液状化した大地を元に戻す方法が書かれているのですが、恐らく預言絶対と掲げるダアトの先人達はこれを預言に詠まれていないことから実行に移さなかったんでしょうね。まあ先人達の思惑はこの点については憶測なので置いておきますが、アクゼリュスが大地の形を保ったまま魔界に降下させる方法があると言ったのを踏まえ、他のセフィロトにあるパッセージリングもいずれはアクゼリュスと同じように耐久限界を超え崩落の危機を遠からず迎える事になります・・・そこで聞きますが今必要な事は大地を壊さないように外殻大地を降下させることと、液状化した大地を元に戻すこと・・・その二つではないのですか、陛下?」
「・・・確かに、そうだな」
ここでルークは危機性を説いていく中、もうそれ以外に方法はないだろうと言外に述べながらピオニーに問う。ピオニーはその問いに肯定以外を返せず、重く返す。
「そうなれば必然、魔界に降下したあとで先に魔界に降りたアクゼリュスの事が遠からず問題として上がるでしょう。ですがアクゼリュスを無事に降下させたということで仮定させていただきますと、先程上げました土壌の汚れが問題となります。問題点が山積みで使いようのない土地、そんなレッテルを張られた土地の使い道は限られてきます。住居にも産業にも使えないなら、せいぜい土地の所有権を主張するために軍隊の駐屯地くらいしか使い道がありません。ですが障気でやせ細り汚れた地では作物が育つのも期待は出来ない上に、そんな地にて働く軍隊への資金と食料も馬鹿にならず無駄との声も上がるはず。そしてそう考えるのはキムラスカも同様で例えキムラスカに所有権を譲っても同じく無駄だと断じ、アクゼリュスに金を費やす事が両国共に無くなります。そのことはすなわちアクゼリュスを人の手が入る事のない、打ち捨てられた地にすることと同義になるんです」
「・・・」
アクゼリュス降下にかかる危険を述べられた上に、アクゼリュスを降下させても全く得がないことを告げられピオニーは一切の反論をせずに納得したように軽く首を縦に一回振る。



「その点で、アクゼリュスを崩落させた場合は違います」
そんなピオニーの様子に今度は崩落させることの優位性を語る。









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