焔と渦巻く忍法帖 第二十一話

「ゼーゼマン、ノルドハイム、アスラン。三人以外は全員この場から出ろ、話は俺達だけで聞く」
「は・・・はっ!」
頷きを入れたピオニーは即座に三人だけ残るように兵士達に命じる。その思い切った発言に兵士は一瞬戸惑っていたが、逆らえない何かを感じたのかすぐさま敬礼を返し謁見の間から退出していく。
「・・・さて、ここにいる三人は信頼できる者達だ。遠慮なく話してくれ」
「はい、わかりました」
兵士達が退出しきったことでピオニーはルークに話をするようにいい、ルークはそれに応じる。
・・・そしてルークはダアト、ユリアシティで起こった事を話し始めた・・・












「・・・という訳です。いざという時にはマルクトにも動いていただかなくてはいけないこと、理解していただけましたか?」
「・・・・・・あぁ」
話が終わりルークはユリアシティが暴挙を起こした時にはちゃんと動いてくれるかと確認すると、ピオニーは配下の三人と共に苦々しげな顔になりながら間を空けて肯定を返す。
預言に対し裏切られたような形になったピオニーからすれば預言を止めたいと思うのは当然だが、半面預言の中身を知っている預言保守派にそこまで思われているというのはやりきれない物があるのだろう。だからこそ預言を詠まなくする決心せざるを得なくなってしまっている。全て整えられた環境の上で選択を迫られたピオニー達の表情には明るさが一切見えない。
だがマルクトには確実に首を縦に振らせる予定だったルーク達にピオニー達の心苦しさなど関係ない、ルークはピオニーを気遣うでもなくただ話を続ける。
「つきましてはこの話はバチカルにいるインゴベルト陛下にもお伝えします、そしてヴァン謡将や大詠師の事実についての公表についての話も。その点におきましてはユリアシティの人間が黒幕であったことはインゴベルト陛下にも頼みますが内密にお願いします」
「・・・あぁわかった。だが・・・一つ聞いてもいいか?」
「なんですか?」
「キムラスカとマルクトに対してヴァンの身柄を渡すのはいいんだが・・・それからのヴァンの処罰をどうしようと考えているんだ?本来ならこう言った身柄引き渡しの場合はどっちか一つの国に渡すのが通例だと思うんだが、貴殿はニ国と言った。その真意はなんなんだ?」
ピオニーの質問は当然の所を突いて来る。本来であればどちらか一国に老け髭を渡せば済む事、何も両国を巻き込んでやるような事ではない。
どういう風に老け髭を裁くのか・・・?マルクト側としても当然気になる所に、ルークは口を開く。



「その質問に答える前に、陛下は普通に大詠師達の話を全世界に触れ込んだとして民は疑いを持たずに信じると思いますか?」
「ん・・・まぁ素直に信じる者もいれば、信じない者もいるだろうとは思うが・・・」
「ならばその大詠師達の行動を信じさせる為のきっかけは何が一番効果的かと思われますか?」
「何って・・・預言が示す内容が真実味があるなら民は信じるとは思うが」
「そう、それです」
「?」
質問のやり取りの中でルークはピオニーの具体策ではないが当然とも言える言葉に強く正解だと言い、ピオニーは疑問を見せる。
「この話は出来る限り信じてくださる方が多ければ多いほど、預言を詠まなくなるような風潮に自然に早くなっていきます。恐らくそのまま話をしても信じてくださる方は大勢になるとは思いますが、万全を期して事に臨みたいと思っています。ヴァン謡将を両国に、と言ったのはその仕上げになるからです」
「・・・ならその預言を信じる為のきっかけはなんなんだ?」
結果に繋げる為に老け髭を使うのは理解した、だが過程はなんなのか?
ルークの策にピオニーは先を急かせて答えを聞こうとするが、そこでルークは頭を下げる。
「きっかけを話す前に前置きをしますが、それはもうどうしようもないものだとしても少なからずマルクトに衝撃をもたらします。そしてそれを利用する事をお許しください」
「・・・それは話の内容次第だ、早く言ってくれ」
「わかりました」
丁寧に語られるそれにはマルクトに損がある、そう言われてピオニーは話を聞いてから決めると言う。その言葉を受け、ルークは頭を上げる。



「そのきっかけというのは、アクゼリュス崩落です」






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