焔と渦巻く忍法帖 第二十話

「だーめ♪」



「!そっ、そんな・・・!」
出された結論ははっきり、いたって楽しそうに笑みルークは拒否を示す。最後のすがる相手からの拒絶・・・トリトハイムと詠師達は絶望しか出来ず、体ごと肩と力を落として床に机にと突っ伏していく。
「あーあー、そんな落ち込まなくてもいいじゃん。俺が言ったのはあくまでも両陛下にばらすだけで、何も公表するために言う訳じゃないんだぜ」
「え・・・それはどういう事ですか・・・?」
しかし尚もまだ裏がある話し方に、トリトハイム達詠師陣は突っ伏していた顔を上げ笑顔のルークを見上げる。するとそのルークはいきなり市長を勢いよく指差し、ビクッとするその姿を見ながら説明をしだす。
「さっきもあんたらが言ってたけど、預言の中身を知っていて実行に移したのはあくまでも大詠師様やこのじいさんにお髭謡将だ。あんたらは何も知らなかった・・・そうだろ?」
「はっ、はい」
「だーかーらーだ。これからはあんな預言を未だに実行に移そうとしている人達の為に、行動に規制をかけるんだよ」



「もしこれから預言を実行するような動きを見せたなら両国に即刻、今発覚した情報を全て世界に明かさせてユリアシティ制圧を命じるように約束させてな」



「!!?」
・・・預言保守派達に向けての実質的な罰がルークの口から明かされた。
指を指されたままの市長は世界のほとんどを相手取らされるだろう、明らかにユリアシティ側にとって不利でしかない状況を出されてガタガタと震え怯えだしている。
「俺らはこれからマルクトに行く、今言ったように口止めはするが大詠師様の事実を話にな。そしてその暁にはキムラスカにも連絡を取ってすぐに大詠師様達の話を世界に公表させる。そうなったらダアトはもう預言を詠めなくなる、なんせ導師が預言を否定するような発言と行動を取ってる訳だからな・・・けどそれでもあえて預言実行に踏み切ろうとしようとしたのが、市長に代表されるユリアシティの住民だ。そこであんたとしても変にダアトがこんがらがってる状態で、ユリアシティから更に大詠師の遺志を引き継いだ者みたいなやつが現れても面倒だろ?せっかく自分達が大詠師と髭謡将が起こした事態の収集に必死に奔走してる時にんなことされちゃ」
「はい、確かに・・・」
「それは俺らからしても、両国からしてもはっきり迷惑極まりないからな。だからこそ、その可能性を摘み取るんだ。そんな奴が現れたなら即座に粛正!・・・って形でユリアシティの手を止める為にな」
「な、成程・・・」
恐怖による抑制で狂信者達の行動を規制。ルークの最高の脅迫をもっての呪縛にトリトハイムは恐々としながらも、納得した様子を見せる。
「ただし、それでも預言達成の野望を持つ者をダアトでのさばらせたなら世界の反感を一斉に買う事になる。ベクトルは違ってもこの髭謡将みたいな行動を見過ごしてもう取り返しのつかない事態にでもなったなら、ユリアシティだけじゃなくダアトもその騒動に巻き込まれる事は避けられなくなるだろうな・・・それを避ける事が出来るかどうかは、これからのあんたらにかかってるんだぜ?」
「・・・え?」
だが今度は自らにも重大な責任がかかってくると言われ、詠師達は一斉にどういう事かと目で訴えてくる。その視線にルークは老け髭へと見下すよう、視線を向ける。
「コレの行動を見過ごしていたらあんたらに待っていたのはダアトどころじゃなく、世界規模で危険な事が起こっていた。それはわかるだろう。だからあんたらは第二のヴァン謡将って存在を作らないよう考えなきゃいけないんだよ、じゃないと今度こそダアトは潰れる事になるぜ?世界の流れが預言を詠まなくなることを受け入れつつある流れの中で、そんな重大な世界を巻き込んだ事件を引き落とした・・・そうしたらこんな声があがってもおかしくないぞ。‘もうローレライ教団に存在価値はない、ならいっそ攻め落としてしまえばいい’・・・なーんてな」
「「「「っ!」」」」
宗教は魅力という物がなくなれば自然と人が去っていく物、そして預言という世界全体に蔓延していた習慣の魅力は絶大。人心が離れた大きい宗教程魅力がなくなった時の反動がひどいものはない。
ただでさえ崩れる体制の中でそのような事件を起こせば武力制圧されて、その地を両国どちらかに領地とされてもおかしくはない。
ダアトの最悪な最後の可能性を聞いて、詠師陣とイオンが愕然とした様子になる。








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