焔と渦巻く忍法帖 第二十話

「預言を知る大詠師が死んだって明かしたならしばらくは事態の鎮静化に時間を使わなきゃならない。世に知られる情報では戦争を引き起こそうとした大詠師だが預言を知っていた、その点で大詠師になびく人は残る。けどこの髭オッサンの事実を聞いて大詠師から離れる人達は少なからず出て来る、第七譜石の中身を知って少しは考える人達はいるだろうしな・・・そんな二つの意見の対立を見せる預言保守派を一つにまとめるのは、相当時間がかかるぜ?」
「う・・・」
ダアト内での立場を考え発言をするルークにイオンは言い返す事も出来ない。
「そしてそんなダアトをまとめている導師の元に迷い込んでくる情報は、二国でどんどんと預言が詠まれなくなっているというダアトにとっちゃ致命的なもんばっかりになるぜ?さっき言ったような、な」
「え・・・?」
「そして知るのは世界各地で徐々に預言が詠まれなくなっていっているという現状で、それは当然ダアトの預言保守派も預言改革派も知る事になる。そうなったらダアトに待ってる結末は・・・」



「ダアトの存在意義の預言すら詠めなくなるっていう状態だ」



「「「「!?」」」」
末期に見えるルークの用意した光景はダアトの意味すら無くす、預言が詠まれないダアト。
イオンと詠師達はその最終的な結末に、どうしようもない絶望の色を顔に出してルークに何故という瞳を向けている。
「世界としてはどうしても預言を廃除して暮らす事を前提とした流れが出来る。そんな中で預言を詠む事を欲する人間はどんどん少なくなる、せいぜい預言を詠んで欲しいと願い続ける人は大詠師をあくまでも擁護する預言保守派とごく少数の世界の流れに反発する人達くらいだ。けどダアトとしては大詠師がやってきた事実、預言実行を大詠師一人に押し付けて自分達は関係ないと銘打ってるんだ。んなことしてるのに戦争の詠まれた預言だけを無視して、いざ自分達は戦争が詠まれてない預言だから平気で詠みますなんて言って預言を詠めるなんて出来るなんてわけねぇだろ。だったら戦争も認めろなんつって、まだ預言を詠み続けさせたい預言保守派なんかが揉めだすのはすぐに考えがつく・・・だったら預言で極力揉めないようにするにはどうするかって言えば、預言を詠まないようにする以外にねぇんだよ。導師が預言を否定してんのにそんな調子いいこと言ってたら、尚更ダアトは荒れるぞ」
「・・・預言が、詠めなくなる・・・」
流石に預言という心の拠り所が使えなくなるというだけあって、イオンと一同の視線が一斉にルーク達から外れてさ迷いだす。






イオン達にも言ったがいくら世界に預言不審の流れを作ろうとも、それを受け入れられない者は当然出て来る。人間の心を1ミリのズレもなくピッタリ全部同意させることなど出来るはずがない。
そのことはダアト内でも二つの派閥があることでイオン達も重々理解していることだろう、だからこそ預言保守派の取るだろう行動という物がどれだけ危険であるのかを理解させることが出来る。






「けどあんたらはそんな事を一切考える事なく、大詠師に罪を着せる事だけを考えた。それが愚かで滑稽だっつーんだよ」
視線がこちらに向かないイオン達に追い撃ちをかけ、ルークは考え無しの発言に辛辣な言葉を送る。
「かと言って今言った話を覆す程の案がないのも事実だろ、あんたらからすれば。ならせめて傷口が浅いようにするにはどうするかといったら、俺の言った案以外にあんたらに打てる手はない・・・どうだ?反論出来るか?」
絶対的優位に立って質問するルークに、誰もが口をつぐんで沈黙を保つ。








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