焔と渦巻く忍法帖 第二十話

「・・・え・・・?」
「そーの表情じゃやっぱ理解出来てねぇよな、お前ら」
預言離れ、ダアトにとっては正に死活問題と言える物。だがイオンを始めとした面々は一切現実を理解しておらず、そう言われてほうけるばかり。
ルークはその姿を見てスケープゴートを立てる事の裏に起きる、ダアトにとっての弊害の説明をしだす。



「いいか?ダアトは戦争が起こるっていう預言を大詠師だけが独占して知っていて、その戦争を起こさせようと大詠師は行動してた。けどこの髭オッサンはそんな預言の更に先を知り、預言を欺く為に禁忌の技術のレプリカ技術を使ってルーク様をかどわかしてキムラスカを謀り、尚且つアクゼリュスにて預言に死を詠まれていた兵士達を殺そうとした。まぁ大詠師様が預言を独占した以外は全て事実だよな?」
「え、えぇ・・・」
「そうすりゃ確かに恨みつらみや責任の行き先は二人に向かうだろう。けどな、事実を知った民達はどう考えると思う?」
「・・・どう、とは・・・?」
「第七譜石に詠まれた預言の内容について、だよ・・・ちょーっと頭捻って考えてみな、民の立場になってみてな」
「民、の・・・?・・・むぅ・・・・・・・・・っ・・・!?」
「「「「・・・!?」」」」
・・・ここで前置きを置いた初めての投げかけに市長もイオンも詠師達も考える体勢に入った。だがそれでようやくまずさに気付いたようで、一斉に思考と視線を焦りでルークに持ってくる。
とはいえその気付いた事が勘違いかもしれないのは今までの経験から十分に有り得るとルークも考えているので、補足という名の正解を語りだす。
「まぁまずマルクトはほとんどの人がダアトへの信頼を無くすだろうな。民は滅びが詠まれているというのにそれを一切止めようともせず、逆に滅びを推奨してきた人間がいた組織を信じられるはずがない。それどころか預言を詠む事すら止めるだろうな、だって預言にはマルクトの滅びが詠まれていたんだし預言通りに動いたら死ぬかもしれないなんて思う人達は大勢出て来ると思うぞ。そんな疑心暗鬼に苛まれた人達が取る行動はいっそ預言に頼らなければいい・・・そういった結論にいたるとなるわけだ」
当然と言えば当然だが、預言に従うメリットが全くないマルクトは預言を全力で拒否をするだろう。
「それにキムラスカも大多数の人が預言を詠む事を止めるな。この髭オッサンは大分キムラスカに対して粗相をして、更に第七譜石の内容を知っている。その話を明かしたならまず陛下とファブレ公爵は預言から離れる事を宣言するぜ?なんせルーク様って大切~な世継ぎをかどわかされて憤慨してたからなぁ、それに現状を知って和平を結ぶって宣言したんだし。最初不満を色々言う人はいるだろうけど国のトップ二人が被害に遭って、尚且つ髭オッサンの行動に復讐って動機が明らかになってんだ。多分色々民や貴族達の波紋は呼ぶだろうけど、いずれは納得して預言を詠まなくなるだろう。なんせキムラスカも預言の被害者なんだからな」
キムラスカはマルクトと違い第七譜石の存在がやたら眉つば臭いと民の間で話題になるだろうが、それでもルークと煙デコの入れ換えが行われたのは紛れも無い事実だ。そういった事実があるからこそインゴベルト達の政治に不満はあれども自然と受け入れていくだろう、預言を詠まない事を民は。
「最後にダアトだけど、相当荒れるぜ。なんせ大詠師が譜石の中身を知っていて、導師が知らなかったんだ。ただでさえ導師と大詠師の対立が目立つ状況なのに、大詠師の死と第七譜石の中身を明かされたなら確実に対立が表面化するぞ」
「そんな・・・!」
そして最後に回していたダアトの他二国とは明らかに違う、危険度の高い可能性にイオンが明らかに考えていなかったとルークにわかりやすい焦りを見せる。








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