焔と渦巻く忍法帖 第二十話

「市長もトリトハイムも、他の詠師達も言葉を発してはいませんが大詠師を見捨てる事に異義を唱えていません。それはつまり肯定でもあります。そして、僕の意見は・・・モースをスケープゴートにする方がいいという、結論に達しました・・・」
・・・とうとうイオンの口から諦めにも等しい、惑星屑の見捨てる宣言が悲しそうな瞳を浮かべながら出て来た。その言葉にルークは不敵な笑みを浮かべつつ言質を取る。
「それでは貴方方ダアトは大詠師に預言の中身を知っていたのは彼一人だとその責任を押し付け、ヴァン謡将を二国に渡す事にするんですね?」
「!・・・っ・・・はい・・・」
尊大な皮肉が込められた確認にイオンと市長達は反論をしかけるが、事実なだけに何も言う事が出来ずイオンは苦々しい肯定以外を返せなかった。
「・・・フッ、ククッ・・・」
「「「「?」」」」
するとルークの隣にいたナルトが途端に顔を隠すように掌を当て、くぐもった声を出す。いきなりの奇行、一同が何事なのかと怪訝な顔つきになるがナルトはその手を唐突に退けた。
「アーッハッハッハッ!ハッハッ、ハァ、ハァ、ヒィ、ヒィィ~・・・おっかしぃ~・・・!」
「・・・え?」
そこに現れたのは盛大な笑い声を携えた、腹を抱えて爆笑するナルトの顔だった。そのいきなりの変貌に一同は面食らっていたが、隣にいたルークはいたって楽しそうに笑いながらナルトに話しかけた。
「んな笑ってんじゃねーよ、ナルト。まだこいつら状況理解出来てねーじゃんか」
「だって、だってさぁ・・・自ら墓穴に飛び込んだ事、理解してねぇから、っつーかおっかしぃ~!アーッハッハッハッ!」
ルークの声に笑いでとぎれとぎれながらに答えていたナルトだったが、再び笑いを堪えきれなくなり盛大に笑い出す。だが流石に墓穴という単語に不穏さを感じたのか、一同の雰囲気が怪しく重い物へと一瞬で変わった。
「あーあー、それは今から言おうと思ってたのになぁ。ま、言っちまったもんはしょうがねぇか」
そんな重い雰囲気にも関わらずルークとナルトは笑いの質は違えど、一切笑顔を損なっていない。ルークはゲラゲラ笑い続けるナルトをたしなめる事すらせずに、軽い笑みを見せつけている。
「・・・あぁ、すみませんね皆さん。こちらだけで話を進めまして」
そして少しの間を開けた後失念していたと言わんばかりの言葉を見渡しながら言うが、その声と顔は明らかに一同を見下した笑みへ変わりきっていた。
「・・・朱炎。その墓穴、とやらの意味を教えてくれませんか?」
「あぁいいよ、別に」
墓穴という単語にダアト陣は今までの話から余程よくない事だと感じているのか、先を促してこない。代わりに眼鏡狸がじれったいと思ったのか話してくれと言い出し、ルークはあっさりと了承を返すと机に手をかけその顔のまま話し出す。今までと違い、口調に丁寧さのかけらも見せず。
「あんたらほんっと、馬鹿だなぁ。今肯定した大詠師様の預言押し付けは、あんたらにとって大変な事を招くっていうのに。ちょっと逆を考えりゃ、すーぐに事態に気付く事が出来ただろうに・・・あんたらほんっと、馬鹿だよ」
「何!?・・・それほど私達を馬鹿にするのであれば、その理由を教えていただきましょうか・・・」
二度強調するように馬鹿だと言われ流石に無駄なプライドに火が着いたのか、市長は空気を気にせずにルークを睨みつけてきた。
「だから今言ったじゃん、逆を考えればいいって。でもわからないってんなら教えてやるよ」



・・・預言の内容をダアトが知っていたと人々に知られたら都合の悪い物になるだろうから、惑星屑をスケープゴートにするよう話をしたわけではない。ルーク達の狙いはあくまでも預言を詠めなく、使えなくすることが目的・・・

惑星屑をスケープゴートにする真の狙い、そして自分達が用意した結末。それをルークは今、言葉に表した。






「預言があんな内容記していて大詠師様がその情報を独占してたってなったなら、確かに国家間でのいざこざはなくなるだろう。けどそうなったら、世界中の多くの民が一斉に・・・預言離れを引き起こす事を示してんだよ」







22/30ページ
スキ