焔と渦巻く忍法帖 第二十話

「そうしたなら貴方方には大きな波が押し寄せる事になるんですよ?第七譜石がホドにあったという事をヴァン謡将が知っていた事を明かし、その中の預言を利用する形で預言を排しようとしていたと世界に知られたなら・・・ダアトが戦争を望み、あまつさえ起こそうとしていたと聞いたら少なくても平和を愛する預言の内容を知らなかったキムラスカ・マルクトの両国の民はダアトに対して不信の目以外浮かべる事は出来ませんよ?いや、ローレライ教団の信者ですら教団の上層部を疑うでしょうね。預言次第ではなんだってやる、人殺しの集団・・・そう見られても全くおかしくないんですよ、例え一部の預言推進派が起こした行動とはいえ」
「「「「・・・!!」」」」
「・・・っ・・・!」
老け髭を何もせずに両国に渡したならこうなると懇切丁寧に説明しながらも、推進派という言葉を出すとルークははっきり市長に楽しげに視線を送る。その説明にようやくまずさに気付いた詠師達とイオン達が一斉に顔を悪くして市長に目をやると、市長は愕然としながらも下に視線を向けるだけ。まるで現実逃避をしているかのようにガタガタ震えるばかりで、反論が一切出て来ない。
「だからこそ、私は大詠師をスケープゴートにするべきだとおっしゃっているんです」
その様子にルークは敢えて用意した逃げ道をちらつかせ、一同の視線を再び自らに持って来させる。
「今キムラスカ・マルクト両国では大詠師は戦争の預言を実行させようとした人物、とまでしかレッテルは張られていません。このユリアシティで預言の中身を知りその預言を実行に移す為の代理人、というのは今この場にいる我々以外はいません」
「つ・ま・り~・・・泥を被ってもらう役目としては申し分ない人材なんだってばよ、預言を実行しようとしていたのは大詠師だけでしたって証拠を揃えさえすればダアトに対しての波風は少しはマシになるだろうから」
スケープゴート、濡れ衣を着せられる者。
今まで黙っていたナルトもルークの話に加わり、惑星屑をスケープゴートへと押し上げる。本来なら人道的に見て心情ははばかられるところのはず・・・だがそのスケープゴートという人をおとしめる為の物に魅惑的な響きを感じたのか、詠師達と市長はルーク達と首だけで苦悶の表情の惑星屑を交互に見遣りながら少しづつ表情を明るくしていっている。
だが対照的にやはりというか、暗くなっていってるのはイオンだ。
「そ、んな・・・」
ボソッと呟いて惑星屑の首をジッと見るイオン。その声には葛藤が存分に込められている、恐らくは惑星屑を擁護するべく動くか惑星屑を見捨てるかの非情な判断を下すかのどちらにすべきかの葛藤だろう。
「この処置ってのは重要なんだよなぁ~、だって下手すっと戦争の元になるんだし」
その揺れを断ち切る為に、選択肢を消す話をナルトがしだす。
「ただでさえホドの崩落のせいでヴァンのオッサンが預言を憎んでいるってなってるのに、ダアトが戦争の事実を知らぬ存ぜぬじゃああまりにも不自然極まりないってばよ。事件の始まりはホドから・・・なのにそんな明らかに怪しいダアトがそんな態度を取ってたなら、各地でホド戦争に関わって生き残ってた人達が筆頭になって何かしでかしても全然おかしくないと思うぞ?これはダアトの陰謀だ、預言を盾に好き勝手してるんだって言い出す人達がどんどん溢れ出したならもう噂は生半可な事じゃ止められない・・・そんな戦争に向かいつつある流れを消すには、スケープゴート。それを立てる以外に手段はないんだってばよ?ど・う・し♪」
「っ!」
考えられる負の可能性は十分と言っていい程絶望的に高い。ダアトに不信感を持つ人間が増えた後の事だけに、より一層の不安は強まるばかり。
ナルトは戦争になるかもしれない流れを口に、イオンの顔を覗き込みながら冷ややかな笑みで惑星屑を見捨てる以外にないと述べる。イオンはその言葉に苦しそうに息を詰まらせるが、そんな様子を見てトリトハイムがたまらずイオンに向き直る。







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