「第七譜石がホドにあったという事実、これはヴァン謡将が自白して下さっている事で間違いない事だと思われます。虚言ではない、という事は大詠師の持ち出した譜石とその内容が被っている事からお分かりでしょう。貴方方が嘘だと声高に叫んだとしても、少なく見てヴァン謡将にとってこれが紛れも無い預言に外れた行動を取った理由。そればかりは覆しようもありません」
「・・・うっ・・・」
嘘とルークに責め付かれても、本人の動機に関しては本人の口から出ているだけに否定のしようもない。巧みに反論を封じられた市長は言葉を失い、唸るばかり。



・・・さぁ、ここからがダアトと預言の栄光の歴史が終わり世界が激震を始める瞬間のプロローグ・・・

お膳立てを全て済ませたルークは、その材料全てを使いダアトという存在の抹殺へとかかる。



「ここまで聞いたなら貴方方にも理解出来るでしょう、ヴァン謡将を庇う事が出来ない理由が。だからこそ貴方方、導師も含めてダアトが取れる道は一つしかありません。ヴァン謡将をキムラスカ・マルクトの両国にお渡しし、大詠師の死を当然の物だと受け止める以外には」
「・・・ん・・・？お待ち下さい、朱炎殿。まだヴァン謡将の身柄を両国にお渡しせねばならないのはわかりますが、その・・・大詠師の死亡も当然だというのは、何故・・・？」
老け髭と惑星屑、両者の扱いを告げるルークに今度はトリトハイムが惑星屑の扱いはなんでそうなるのかと自然に進みそうになっていた流れを止め、畏怖のこもった視線でルークに問う・・・畏怖は惑星屑を殺した事から、どのような対応をルーク達が取るのかわからないことからだろう。
その質問にルークは場の雰囲気には似つかわしくない、キョトンとした表情を見せる・・・傍らのナルトは口元を手で人知れず覆い隠しているが。
「ど、どうなされたのですか！？」
「あ、いや・・・貴方方は本当にそのまずさを理解されているのかと、ちょっと疑問に思いまして」
「・・・どういう意味ですか・・・！？」
今までの緊迫した雰囲気とは違い、トリトハイムの焦って詰める様子にルークは明らかに小馬鹿にしたよう薄ら笑いを浮かべる。そのあからさまな態度にトリトハイムは流石に感情を抑えながらも怒りを見せるが、いたって朗らかに笑いながら・・・



ダアトを阿鼻叫喚の地に変える言葉を放った。
「だって両国のどちらかに渡したならヴァン謡将のこの話は全世界に暴くんですよ。大詠師にスケープゴートになってもらわなかったなら、ダアトは間違いなく潰れますよ？」
「・・・え？」
最終目的の発表、そしてダアトの逃れられない命運。明かされたルークとナルトの真意にトリトハイムはただ呆然とするばかり。
「ちょっと・・・待って、下さい。朱炎・・・それは、どういう事、なんですか・・・？」
止まってしまったトリトハイムの代わりにイオンが今までとは比較にならないくらいに体を振るえさせ、ルークを見上げるように震える瞳と声で真意を問う。
いや、正確には違う。真意を問いているのではなく、その言葉を否定して欲しいと願っているのだ。イオンは。その不穏な響きを宿す、ルークの言葉を。
「あれ？普通国の罪人を他の国に引き渡す時はちゃんとこういう理由で渡しますって、対外的にも国際的にも民に納得してもらうように説明するものではないのですか？それが重要地位にいる人物なら尚の事」
「た、確かに・・・そうですが・・・」
しかし個人の気持ち、それも実年齢二歳のイオンの甘い感情論では世界の決めた体裁や手続きを止める事は出来ない。ルークからそうじゃないのかと投げ掛けられイオンはただ否定も出来ずに、頷くばかり。









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