焔と渦巻く忍法帖 第二十話

「今お聞きになりましか?ヴァン謡将の言葉を」
「た、確かに聞きました!ですがそ、そのような事を信じる事など・・・!」
「証人はここにいるのですよ?ヴァン謡将の配下であった、六神将の彼らが。彼らはヴァン謡将の行動に関わっていた者として、証言をしてくれました。言い逃れは出来ません。それに市長、貴方はレプリカという存在がどのようなものかを知らない訳ではないでしょう」
「!!」
「「「「?」」」」
嘘だと声高に叫びそうになっていた市長の声を遮るよう、ルークは証言とレプリカ技術を知っている事実を出して揺さぶりにかける。その揺さぶりに市長はわかりやすく動揺するが、何の事を言っているのかわからない詠師達は市長の動揺に疑問の視線を集める。
・・・市長からすればレプリカ技術の存在を知っているのは当然だ、ダアトにてレプリカという存在のイオンがいる。それを市長が知らない訳はない。とはいえ一般的にはイオンはオリジナルで通っているのだ、それを知っていると暗に示されるのはやはり心臓に悪い事だろう。
「事実こちらにおられるルーク様と私を見比べて見て下さい。服装を除けば瓜二つの容姿をしているのが皆さんにもお分かりいただけると思います・・・この事が指し示すのはどのような事なのか、わからないわけではないでしょう」
その流れのままにルークは後ろにいた煙デコを紹介するよう手を差し出し、煙デコが‘ルーク・フォン・ファブレ’であることを明かしつつレプリカ技術が実際に使われた事の証明をする。
「「「「「・・・!」」」」」
ルークの言葉を受け二人を見比べる詠師達と市長はその鏡に写したかのような容姿に、その事実を受け入れたのか一斉に顔を青ざめさせる。
「理解していただけたようですね。そして理解した今なら分かるでしょう、ヴァン謡将を庇う事のなんと愚かな事かを。更に補足として付け加えますがキムラスカのインゴベルト陛下はヴァン謡将の行動を受け、ダアトの事を信用出来ないとおっしゃいました。そのことを踏まえて尚、貴方方はヴァン謡将をお庇いしたいと言えますか?」
真実は信用出来ないと言わせたのだが、それは多少インゴベルトの本意も入っているので出て来た言葉に偽りはない。
だがキムラスカから信用を失っているという言葉を聞いた詠師達は、一斉にルークの質問に首を横に振った。やはり、キムラスカに信用されないというのはダアトとしては大きな問題だ。ローレライ教団の活動が非常にやりにくくなる分としては。
その点、詠師達の判断は正しいと言える物だろう。
「・・・そんな、ヴァン・・・何故お前はそのような預言から離れた、愚かな行動を・・・」
そして老け髭を庇う事のまずさに気付きながらも、市長の口から出て来る言葉は預言から外れる行動を取った事への叱責ばかりで、老け髭を責めるようにブツブツと呟いている。



・・・もう市長も老け髭を見捨てる事に同意はしている、そう判断したルークは話を次の段階に進める。
「市長、ヴァン謡将がそのような行動を取った訳を知りたいのですか?」
「・・・それは、確かに・・・」
「そうですか、では話していただきましょうか・・・ヴァン謡将、貴方は何故預言から外れる行動を取られたのですか?」
市長に質問をして憔悴しながらも聞きたいとの答えを聞けた事で、ルークはさもなんでもないように老け髭に理由を言えと言葉だけ丁寧に言えよと告げる。



・・・老け髭からどういった話が出て来るのか。詠師達に市長、更にはイオンに魂の抜け切ったような表情をしていた同行者達も力は感じないが老け髭から出る言葉に注目している。だがその言葉が出て来た時に後悔どころの物ではない感情が浮かばないだろうと思いながら、ルークとナルトはそっとほくそ笑んだ。その瞬間を思い。







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