焔と渦巻く忍法帖

「じっちゃん、何か任務ない?」
「・・・先程渡したであろう」
「もう終わらせちゃった」
はぁ、という溜め息が老人から洩れた。
「虚空、早く終わったからすぐ次というわけにもいかんのじゃ。わかってくれんか?」
そういわれた狐の面を被った青年は明らかに不満といった雰囲気が漂っている。
「・・・Sランク任務をたった一人で五つも一晩で終わらせてきたんじゃ。疲れは」
「ナイデスホカゲサマ」
明らかに任務をよこせとやる気のない態度で返事をしている。が、これは本来有り得ないことだ。任務ランクで言えば最高に位置する任務を五つ・・・
一つをクリアするだけでも忍の実力として高レベルに位置することになる。しかしそれは小隊、つまり複数の人間が集まって行っての話だ。しかし虚空と呼ばれた暗部はそれを単独で五つ、しかも一晩で成し遂げている・・・
「さっきの任務手応えがなかったから少し物足りないんだ」
・・・それを簡単だと言えるだけの実力。はっきり言ってしまえばこの青年の実力はこの木の葉隠れの里において今火影をさしおいて一番である。
「・・・いい加減変化を解かんか?ナルト」
そういわれた青年は辺りを見回した後で印を組んで自分に掛けた変化の術を解いた。変化を解いた時の煙の中から現れたのは四、五歳くらいの金髪の少年だった。
「いいの?じっちゃん、変化解いて?」
「構わん、お主も誰かいるか確認しておったじゃろう?お主なら気配を見落とす事はないからの」
「で、任務は?」
そんなことはどうでもいいから任務、任務!!
はたから見れば祖父と孫の掛け合いだが内容自体はそんなものとはかけ離れている。事実火影はこの少年を孫だと思っている。自分に構ってくれるのは嬉しいのだが、あまり子供に負担を掛けたくはないのだ。



(・・・仕方ない)
「ナルト、これが何か分かるか?」
火影が手にしたのは何か複雑な文字が書かれた木箱。
「封印が施されておる。これの解除を命ずる」
そういわれたナルトという少年は木箱を色々調べながら「これなぁに?」と言ってきた。
「これはわしが火影になる前からあったものじゃ。初代様がこれを見つけてから何人もの人間がこれの解除を試みたが誰も成功したものはおらん。無論わしも含めた全火影でもじゃ」
そういわれナルトは嬉しそうに木箱を眺めている。
「それを解除するまでがお主の任務じゃ」
実際これはあまりナルトを任務につかせたくはないからと苦し紛れにだしたものである。といっても今まで誰もが出来なかった事をこんな小さな子供が達成出来る筈がない。火影はそう思いこの箱を渡した。
「暇潰しには丁度いいや!今日はこれを持っていくよ!」
そう言い残し目に追えない早さでその場から消え去ってしまった。
(・・・もう少し子供らしいことに興味を示して欲しいのう、すまん四代目)
誰もいなくなった執務室でナルトを血まみれの道にあの歳で進ませるしかなかった自分に対する悔やみを思う火影の姿があった。




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