焔と渦巻く忍法帖 第二十話

「なっ!?ヴ、ヴァン!?ヴァンが何故ここに!?」
「連れて来たからに決まっているではありませんか、アクゼリュスから」
わかりきった驚きを見せる市長を尻目に、ルークは老け髭の顔に近づくと解の印を組む。すると今まで死んだようにピクリとも反応しなかった老け髭の目が勢いよく開かれた。
「!・・・?・・・ヴァン?」
「問い掛けても無駄です、市長」
老け髭の行動に反射で驚く市長。だが目を見開いて以降虚ろに濁った瞳を覗かせるだけで何の反応を示さない老け髭に、市長がその異常に訝しげに声をかけるがルークがすかさず無意味さを告げる。
「ヴァン謡将には私とこのナルト以外の言葉には反応しないよう、色々処置をさせていただきました。今の謡将に自白していただかなければいけない事がありましたのでね」
「なっ・・・!?」
ルークの全く容赦を感じさせない、まるでゴミをいじったかのような声色。更に老け髭を見るあまりの目の冷たさに、市長は絶句といった様子を隠せない。






・・・ルークが老け髭にそのような処置を施したのは、ダアトに来る移動の間。イオンが事を穏便に、と勝算なく言い出した後だ。

老け髭を入れていた一室にいたのは倒れていた老け髭とリグレットに、二人を囲むように位置についていたシンクにサフィール、それにアリエッタだ。本来ならアリエッタはその事実を知るには酷ではないかとサフィールに打診されていたルーク達だったが、老け髭を敵対視するほど怒りを見せていた為に中途半端に後で真実を伝えるよりはいっそ自分達と一緒に老け髭の計画を知ってもらおうと、場にいてもらうことにした。

その場を整えてルーク達は眠りに落ちる幻術を解いてから、別の自白を促す為の精神支配幻術をかけて強制計画暴露を老け髭にさせた。

・・・それらを全て聞き終わったアリエッタは驚愕を隠しきれずに呆然としてしまったが、今はその事実を受け入れてルーク達に協力することを宣言してくれた。

尚計画を知らなかったのはアリエッタだけだったと聞いて、元々底辺以下だった煙デコの好感度が更にルーク達の中で星の裏側にすらたどり着くのではという程下降した瞬間でもあった。あれだけ約束約束言っていた猪思考姫との約束を自分から放棄しておいて、今のこのていたらく・・・計画に参加していたからには少なからず罪悪感を感じ引け目を感じなければならないはずなのに、今は押し込まれた地位とはいえそこにのうのうと収まっている。ルーク達が好感を持てるはずもなかった。

それは差し置き、老け髭から直接計画の全貌とその過去の経歴を聞いたルーク達は確信することが出来た。老け髭を利用するだけすれば、ローレライ教団の信用失墜と預言を詠めなくすることは可能だと。






・・・そして、今も尚ルークの幻術は老け髭の心を支配している。
「さて・・・それでは話していただきましょうか、ヴァン謡将。貴方が、詠まれた預言の裏でルーク様に何をしでかしたのかを」
「・・・事の始まりは七年前になります・・・」
ルークの口角の上がった命令に、瞳に何も浮かべず老け髭は機械的な事務口調で口を開いて話し出す。
「ユリアの預言に詠まれたローレライの力を継ぐ若者、私は超振動を使えるルークという存在が欲しく彼をさらいました・・・」
「「「「!?」」」」
「私は彼を手元に置く事、それと預言を欺く為に彼のレプリカを作りそのレプリカをキムラスカに渡しました・・・」
「!?ヴ、ヴァン!?」
「以降私はバチカルにて時々レプリカの様子を見に行きながらも、ルークを監視して手元に置いています・・・」
「もう結構です」
必要な分は引き出し終え、もうアクゼリュス以降の状況を一切知らない老け髭の声をルークは結構の一声で制止をかける。ルークの幻術支配下にいる老け髭はピッタリその声で会話を止めるが、あまりの爆弾発言な事実に詠師達と市長は思わず立ち上がり焦りの顔になる。市長にいたっては老け髭に詰め寄りたくてたまらなさそうだ。









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