焔と渦巻く忍法帖 第二十話

「・・・という状況に陥った為、そこのナルトがあまりにも大詠師の態度が被害者の立場を鑑みてないものだったと判断して首をはねました・・・市長、貴方は大詠師と同じ位置に立ったとしたなら兵士の方々が納得出来るような言い訳・・・おっと、なだめの言葉をかけられますか?」
「!・・・うぅ・・・」
惑星屑が死んだ、その時の状況を説明し終えたルークはあからさまに言い訳からなだめとどちらにしても被害者からすれば心象の悪い言葉を口にして、市長に詰める。だがやはり預言により殺されるべきだと言われた被害者に対して預言絶対主義者である市長にいい言葉など浮かぶはずもない、言葉の悪意について気にするでもなくただ脂汗をかいて唸るばかりだ。
「何も反論が出てこない、という事は貴方もバチカルにいたならナルトに殺される運命だったということです。そこの大詠師のように」
「お、お待ちください!確かにうまい言葉が出なかったというのは言い訳も出来ません!ですが、導師!貴方は何をしていたのですか!それにティア、お前もだ!何故大詠師が殺される瞬間を黙って見ていたのですか!?」
惑星屑の首を眺めて市長をなじるルークに、市長は劣勢だと自分の立場の不利を認めながらイオンと修頭胸に向かって激しく、罵声にも等しい疑問をぶつけてくる。その市長の主張にイオンは下を向いて何も言えず法衣の裾を掴み、修頭胸は何の反応も示さない。
「何を言っているんですか?市長。導師も貴方の孫娘もその時止める言葉を放っていません。つまり止めなかった時点で黙認したも同然なんですよ、大詠師を殺した事を。それに孫娘さんに到っては大詠師から死んでくれって言われたようなものなのに、大詠師に味方を出来るような心情になると思いますか?」
「ぅ・・・」
その無駄な助けを求める声をルークは一刀両断、認めた物で事実の事を今更変えられないだろうと心情も併せた話しに市長は再び言葉に詰まる。
尚修頭胸を名前ですら呼んでいないのは、名前で呼ぶ必要がないから呼ばないだけ。癒える事のない傷を与えたとはいえ、やはり嫌悪の対象以外にルークは修頭胸を見る事は出来なかった。



「それに・・・今更大詠師やヴァン謡将をかばっても貴方にとって、いやダアトに・・・ローレライ教団にとって得な事などなにひとつとしてありません、いや寧ろ害以外何物もありません」
「・・・何ですと?」
しかしまだ伝えるべき本題は残っている、前置きを済ませたと言わんばかりのローレライ教団に関する不穏な話題をルークは心なしか傲慢に口にする。そんなルークにカンに障ったのか市長は口調を低く落とすが、市長以外にルークに反応を示した者がいた。
「それは・・・どういうことなんですか?朱炎。僕は貴方からそんな事は聞いていませんが・・・」
「・・・導師も、知らない?」
その人物はイオン、たまらずルークに下げていた顔を上げて眉を寄せて質問する。その様子に市長が詠師達と同じようにどういうことだと、目で訴えて来る。



・・・イオンも知らない、それは当然の事だ。単純にルークとナルトが伝えなかったというのもあるが、なにより知らせない事が最高の促進材となるとルーク達が考えたからだ。預言が詠まれなくなる状態に向けて、自身の考えで動くしかなくなると預言絶対主義者と甘いだけのイオンが協力出来るようにという材料に・・・もっとも、自身の考えが預言主体の者達にとっては地獄にしかならないだろうが。



「お話していないのは私の口から語るよりも、庇う事の弊害を本人の口から聞いてこの場で皆さんに協議していただきたいと私が考えたからです」
「「「「?」」」」
ルークの話し方に一同の疑問が顔に浮かぶが、言葉が出るより先にルークからの合図を待たずにずだ袋を抱えた影分身兵士が惑星屑の首の横に袋を置く。
「まぁそのことについては本人に語っていただきましょう・・・ヴァン謡将自身に」
そのルークの言葉に影分身兵士に袋の縛り口を開いて老け髭の顔を出す。今度は顔見せではない、老け髭の存在をルークの意趣返しに使う儀式の為に。









15/30ページ
スキ