焔と渦巻く忍法帖 第二十話

覗き込んだその先に明かされてはならないものを明かされた事で市長がもはや言葉も出せず死にそうな程表情を歪める姿、そして横目にガタッと大きな音をたてて詠師達がその市長を一斉に振り向く姿が映った。
「知らないはずはありませんよね?だってダアトにいた詠師の方々で大詠師がバチカルに行ったって事実を伝えられたのはトリトハイムさんくらいです。それが何故バチカルに向かうには立ち寄る理由のない、ユリアシティにいたはずの貴方が大詠師の居場所を把握していたのですか?ダアトで起こったほとんど知られていない大詠師のバチカル急行の事実、それを正確に把握しているという事は何らかの繋がりが貴方方との間であったことが容易に想像出来ます」
「ちょっ、ちょっと待って下さい!た、確かに私は大詠師にバチカルに行くとの連絡は受けております・・・だ、だからといって、私が大詠師と同じよう預言を知っていたという事には繋がらないのではないのですか・・・?」
更にルークは詠師の情報と市長の言葉から出て来た惑星屑がバチカルにいた事の発言を照らし合わせて、繋がりを強調する。その言葉に詠師達の嫌疑の目が市長に向く中、市長は繋がりがあることを慌てて肯定はするが、あろうことか自分が預言に関しては関わっていない事をあげだす。
こう言った事を言い出す時には大低我が身可愛さの責任逃れ、もしくはただ単なる錯乱のどちらかに当たる。
・・・まぁどちらでもいい、そんな心境のルークは多少市長に気を持ち直してもらい反論の糸口を作れるようにテープレコーダーを取り出す。
「その繋がりを説明するためにはこちらの音機関に納められた会話を聞いてから説明した方が早いでしょう・・・ではご静聴、お願いします」
テープレコーダーに注目を集めさせると、ルークは再生のスイッチを押して机の上にポンと置く。どういった音機関かも理解出来ていない詠師達、そして市長がテープレコーダーを凝視する中でどんどんと収録された音は流れていく・・・












・・・そして全ての会話が終わった時に詠師達と市長は驚ききって声も出せず、固まっていた。
「・・・皆さん、これが大詠師と謡将が市長と繋がっているという証拠です」
そこにテープレコーダーを手元に戻したルークがその証拠を明言していく。
「大詠師は持って来た譜石は都合のいいところであらかじめ折って来たと言いました。ですが大詠師には譜石から預言を詠む為の第七音素を扱う素養がないという話を耳にしました。そんな大詠師が譜石を都合のいいところで折るには誰か第七音素を扱う素養がある人の助けが必要になります。ならば誰がその助けとなるか・・・?まず導師は対立していたというのもあり、助けを借りられるはずもありません。詠師の皆様方は大詠師からそのような話を持ち掛けられていませんのでもちろん違います。ヴァン謡将も候補に上がりますが大詠師が譜石を折る事を決めたバチカル行きを決めた時期にはダアトにはおられなかったので、その可能性も除外します」
惑星屑が老け髭に頼めなかった理由は簡単に言えばキムラスカ圏内の街、ベルケンドにいたことからだとルークは推測している。
ルークが修頭胸とバチカルから飛ばされた時に老け髭は来訪の予定はなかったと言いながらも、イオンの捜索の為にしばらく来れなくなることを伝えに来た。これがダアトから来たならはっきりと言えば時間の無駄である。イオンはマルクト領の方に行ったと報告にあっただろうから、わざわざ遠回りをしてまでルークのご機嫌取りに来たとしたなら馬鹿で滑稽としか言いようがない。
だがキムラスカ領にある街、ベルケンドから来たならつじつまがあわなくはない。ベルケンドは度々レプリカ研究の為に訪れていたとサフィールから聞いてはいたし、ベルケンドからイオン探索の為に呼び出されたならバチカル経由でケセドニアに行く途中でバチカルについでで立ち寄ってルークに顔を出す事もなんら不思議ではない。
時間と言葉の組み合わせ方を考えてみればみるほど、惑星屑と老け髭が接触する時間はなかったものと思われるから老け髭が預言を詠んだのではないと除外される事となった。
「なら六神将はどうか、という質問に対しては詠んでいないとの答えが三人から返って来ました・・・譜石から詠んだ預言には戦争が詠まれていた、そこで譜石を折る事とその預言内容を誰にも言わずに黙っている事・・・それだけの事を聞いて果たして、今言った面子より下の地位にいるものが絶対に貴方方は守ると言い切れますか?」
ここでルークの投げかけに放心しかけていた詠師一同が一斉に首を横に振る。









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