焔と渦巻く忍法帖 第二十話

「そもそもの話ですが、導師ですら知らなかった事を何故私が知っていると思いますか?今更私がその事実を口八丁の嘘で言っている訳はないとお分かりでしょう。とぼけた態度はいりませんので心当たりをおっしゃってみてください」
「うっ・・・・・・・・・そ、んなことを言われ、ましても、私にはその、心当たりは・・・」
ルークの追撃に詰まって視線をさ迷わせていた市長だったが、やがて観念したかのように預言を認める発言をしだしたが、所々ぶつぎれな言葉遣いになって心当たりがないと言い出す。
「でしたらお答えしましょう。私が預言の事を知ったきっかけはヴァン謡将・・・いえ、貴方の孫にあたる方がアクゼリュスにてキムラスカ兵士を襲った事からです」
「・・・はぁ!?」
とぼける様子すら作れない市長にルークは率直に修頭胸と老け髭が市長の孫だと知った事実を併せ、老け髭の行為から知ったのだと告げる。だがその言葉に最初何を言われたのか理解出来ていなかった様子だったが、途端に大きな声を上げ信じられないといった顔をルーク達に見せる。



市長が何故こんな惑星屑の起こした事を知らないといった態度をするのか?・・・それは単純に、純粋に知らなかったからだ。

惑星屑がバチカルでルークに戦争に対しての疑いを消す報告をされてから、アクゼリュスをどうにか消滅させるために預言を明かす事を決めたのはそのすぐ後の事だ。ダアトにいる信頼出来る誰かに相談出来る時間などなかった、ましてやユリアシティにいる市長達に相談するための時間などあるはずがなかった。

老け髭がアクゼリュスでキムラスカ兵士を襲ったのは時間もなく自身一人で考えた惑星屑の独断、預言を実行するためのほぼいきあたりばったりの策だ。だからこそ惑星屑の独断を知る事がなかったのが市長の最低の痛手であり、最悪の重荷となっていた。



「嘘かと思われているのかもしれませんが、紛れも無い事実ですよ。私がその場面を目撃した事もそうなのですが、実際に襲われた兵士の方々が今バチカルにいます。証言者には事欠く事はございませんので、いくらでも異議があるなら言ってください。その代わりキムラスカとダアトの仲が険悪な物になることは間違いないでしょうが」
「・・・まさか・・・そんな・・・何故だ、ヴァン・・・?」
そんな惑星屑とのズレが心に余裕を失わせる、ルークが文句があるなら国家間での問題になると攻め立てるように言うと市長は預言により起こした行動だということを忘れ、混乱の極みに達する。
「理由でしたら今言ったでしょう、預言の為です」
そこでルークは市長に一声かけ、はっと意識を取り戻させる。動揺するのはいいが過度にはいらない、まだ続くと意識を戻した市長にルークは話を突っ込む。
「ヴァン謡将が兵士の方々を襲った時に私は彼を捕らえました。そこで私は独自に掴んでいた話を真実だと確信しました、預言を実現するためにアクゼリュスの消滅を確実にするための保険がヴァン謡将だという話を」
「「「「!?」」」」
「・・・!」
ここで預言の内容がルークの口から明らかになった。詠師達はまさかそんな物が預言に詠まれていたのかと驚きしかなく、市長は中身まで言われうっすら汗を滲ませている。
この手のタイプは表面上では穏やかでも惑星屑と同じよう、目的の為には手段を選ばない人種。似たような境遇にいれば程度の差はあれ、似たような思考回路になっていく。市長も内心ではどうにか預言通りにしようと思考を精一杯フル活動させていることだろう。だが実際にそうしようとしているのは現場に行く事もせず、又聞き話のみで成功と聞いて安心するだけの惑星屑よりも経験値不足ののびしろのない老人。
惑星屑以下の人間がルーク達にどうして敵おうか?預言至上主義者の裏の責任者の反論など一切出てこないよう、ルークは更に話の苛烈さを強めていく。





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