焔と渦巻く忍法帖 第二十話

・・・今の時代からしても、ナルトの世界からしても明らかにオーバーテクノロジーと言わざるを得ない技術を持って作られたその景観に注目しながらルーク達は修頭胸いわく、ユリアシティの会議室に入室して詠師達とイオンを椅子に座らせ市長の到着を待っていた。



「・・・お待たせしました、導師。しかし何故急にまた・・・」
会議室に入って来た存在、その老人と言える人物はゆっくりとした足取りで入口近くの椅子に座っていたイオンに近づきながら訳を問いてくる。
「・・・それは今からこちらの朱炎がお話します。ですので貴方は上座に座っていただいてよろしいですか?僕たちはあくまでも報告が目的、とのことなので・・・」
「?・・・はぁ、わかりました」
イオンの自分の意志ではないとも取れる話し方に釈然としない顔をしながらも、市長はいそいそと入口から逆にある一つの椅子に向かって行き、腰をかける。
それを見たルークは詠師達と市長の視線を受けながら、入口側の机の前に毅然と立つ。
「さて・・・まずは市長、貴方に一つ詠師の皆様に先にお話した事を説明させていただきます。簡単に言わせていただきますとキムラスカとマルクトの間で和平が結ばれる事になりました」
「!?な、なんですと・・・!?」
「「「「?」」」」
まずは市長との意識のズレを詠師達に確認させる為に和平の事だけを口にする。案の定まさかの発言を受けた市長はわかりやすくうろたえており、詠師達は何故和平に反対するような動揺を見せるのかと首をひねっている。
「市長、市長はこの和平について思う所がおありなのですか?どこか表情が優れないようですが・・・」
「い、いえ、そのようなことは・・・」
ルークは更に追い詰めよるが、そこは預言至上主義者。惑星屑と似たような反応でうまいアドリブも効かず、はっきり要領を得ないしどろもどろな対応になってしまう。



「嘘はつかないで下さい、市長?」



だがそのあからさまな動揺に氷の視線と声がルークから市長に放たれる。
「貴方がそうやって顔色が優れない理由は一般には知られていない預言が詠まれているからでしょう。嘘はついても意味はありませんよ」
「あ、う・・・」
今までにない攻める姿勢を見せるルークにどんどんと言葉が無くなって視線がさ迷っている市長。
「ちょっと待って下さい、朱炎殿。どういうことですか・・・?預言、とは・・・」
そこに事情を理解出来ていない詠師勢からトリトハイムが預言と出て来た事で話に食いついてくる。
「本来でしたら預言にはキムラスカとマルクトの戦争が詠まれていたんですよ、それも片方のマルクトが滅ぶ程の」
「「「「!?」」」」
その質問にあっさり気兼ねなくルークは預言の中身を口にし、詠師達を驚きに彩らせる。
「詠師の皆様が知らないのもある意味当然と言えます。何故ならその事実は導師ですら知らない事だったのですからね」
「そうなんですか!?導師!」
「は、はい・・・」
そして矛先をイオンも知らなかった事に向け、その感情を強く煽っていく。詠師の一人がイオンに勢いよく問うその姿、少なく見ても不安やら嫉妬やらの負の感情に近い物が詠師達には植え付けられている事だろう。
預言は神聖な物、ローレライ教団の詠師たる自分は預言を知る義務がある。だが戦争が詠まれているなどという重要な事を何故知らせずにいる、しかも・・・
人の考えを一言一句間違えず言う事は中々出来ないが、詠師達の心の中は大方このようになっているだろうと、真実を知らされなかった信者の心理をルークとナルトはこのように推測している。もっともこうなるに致る心理はある存在が大きいからでもあるが・・・



徐々に味方を失いつつある市長、その老体に有無を言わさず預言を詠む事の弊害をルーク達は叩き込んでいく。








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